■外国人観光客でも人気の1人1台ひとり鍋

 外食でもその流れは顕著で、東京・赤坂の『ひとりしゃぶしゃぶ七代目松五郎』では、1人1台ずつ鍋が提供され、外国人観光客の間でも人気が高まっているそう。シェア文化が薄い国の人々にとって、自分のペースで楽しめるスタイルが受け入れられているようです。日本人客からも「自分の好みで味を調整できるのがいい」といった声が多く、家族連れで来店しながらもそれぞれが“ひとり鍋”を注文する光景も見られます。

「近年は食の機能性やメンタルケアの視点が重視されるようになり、“香りで整う食事”という考え方が広がっています。また、家族で同じテーブルを囲みながら各自が好みの鍋を選べる個食鍋ブームは“つながりを保ちながらも個を尊重する”今の時代の食スタイルを映し出していると言えます。これからの食文化には香り、味、距離感のバランスを取ることが求められてきそうです」(グルメサイト編集者)

 ネット上でも《家で鍋をしても同じ味に飽きてしまうけど、ハーブやスパイスを加えるだけで全然違う》《外で食べる鍋の香りに癒される》《アロマ鍋のネーミングもいまっぽくて好き》といった声が聞かれます。

 香りを食べる鍋。ひとりで味わう時間。どちらも、これからの冬の食卓を象徴するキーワードになりそうです。

トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。