■現役時の自分は「棚にあげる」
でも、武蔵川親方の現役時代は、稽古量、金銭面でだいぶ問題があった。横綱に昇進したのも、奇跡だと噂されるほどだ。そういった過去の自分は棚に上げて、師匠になったら、弟子に厳しく接する。そう、大相撲の師匠は、「自分のことは棚に上げる」のが大切なのだ。
「棚に上げる」タイプとしては、宇良や金峰山、美ノ海ら、一時は6人の関取を抱えた木瀬親方(元前頭・肥後ノ海)。一時は不祥事で部屋閉鎖の憂き目にあったが、現在も20名の力士を抱える「隆盛部屋」だ。
伊勢ヶ濱親方(元横綱・照ノ富士)も、その部類だろう。白鵬の宮城野部屋が閉鎖したことで、旧宮城野勢の有望力士が転がり込んできたのだが、その中の1人が九州場所で大活躍した義ノ富士。現役時代、照ノ富士が稽古熱心だったかと言われると、「?」が付くが、前師匠(元横綱・旭富士)同様、弟子に対する指導は厳しい。考えてみれば、照ノ富士は「自分を棚に上げて」いた前師匠のモノマネをしているのかもね(笑)。
貴闘力忠茂(たかとうりき・ただしげ)
1967年9月28日、兵庫県生まれ。二子山部屋(入門時は藤島部屋)入門後、83年に初土俵。最高位は東関脇。2000年に幕尻(前頭14枚目)で初優勝する。02年に引退し、大鵬部屋の部屋付き親方となるが10年に野球賭博関与のため日本相撲協会を解雇される。現在は焼肉店『ドラゴ』を経営。