■『新しいカギ』特番は評価されるも“ギャンブル”とも……

 数々の番組に携わってきた元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は、今年の各局の大晦日特番を、こう分析する。

「まず、近年の民放での大晦日特番は、テレビ朝日とテレビ東京が“お年寄り枠”として数字が取れるようになってきていますよね。その理由は、『紅白』に若手アーティストが多く起用されるようになった結果、それについていけなくなった年配の視聴者が、テレ朝やテレ東に流れるようになったんです。特にテレ朝『ザワつく!大晦日』は、ずっと世帯視聴率が高いですよね」(鎮目氏、以下同)

『ザワつく!大晦日』は2019年から2024年まで、4年連続で『紅白』以外では世帯視聴率1位を維持している。

「そのため、特にテレ朝に被らないように、残りの各局は編成を考えているとも言われていますね。そういう意味で今年は、個人的にはフジテレビの『新しいカギ』の特番に期待しています。日テレで『笑ってはいけない』が放送されないこともそうですが、このところお笑いが好きな人向けの番組が減っていますからね。

 それに、若い視聴層にテレビを見てもらいたい、という姿勢が明確であることもいいですよね。ただ現在は、若い人はそもそも大晦日にテレビを見ない可能性もありますから、ギャンブルなところもありますが……。

 それに、フジテレビは今年、過去最大級の不祥事が起きてしまいました。それだけに、“一から出直して生まれ変わらなきゃいけない”となっているのではと。

 また仮に今年、『新しいカギ』がイマイチだったとしても、頑張って数年続ければ“若者向けの枠”というイメージを定着させることもできますよね。中長期的に成長させていきたいという狙いがあるのかもしれません」

 ヒロミの『八王子リホーム』を放送する日本テレビはどうだろうか。

「日テレは今回、手堅く数字を取りに来ましたね。今年の『紅白』出場歌手は、若いアーティストと大御所アーティストが選ばれましたが、これは、40~60代の中高齢層が見たいアーティストが少ないということでもあるんです。その層が、家族でのんびり楽しめて、安定した人気のある“リホームもの”を見るということはありそうです。

 もっとも、視聴者からも声が上がっているように、大晦日特番として放送する“特別な番組”という感じはありませんし、『笑ってはいけない』やそれに近しいお笑いテイストの特番を望んでいた視聴者はやはり多かったでしょう。そういう意味では残念ですが、テレビマンとしては“さすが日テレは手堅いな”とは感じますね。

 TBSは、昨年に引き続き『大晦日オールスター体育祭』が放送されるとすれば、こちらも“手堅い”という評価になりますね。というのも、他局は音楽番組やバラエティ番組でも女性ウケしやすいジャンルを扱っている感じがしますが、スポーツ番組は全年齢層の男性を狙えるからです。差別化ができますし、“スポーツ”はリアルタイムでの数字が伸びやすいジャンルでもあります。

 総括すると、このところ民放は『紅白』との視聴率争いを避けてきた感もありましたが、今年はどの局も数字が取れるように力を入れている感じがしますね」

 テレビ離れが言われるなか、NHKを含めた各局は大晦日の夜、テレビの前に視聴者を集められるだろうか――。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)