■『べらぼう』本当の黒幕は?

 生田斗真の演技により、顔が同じでも治済に見えない男が立っているように見えたのは驚きだった。また、美術史では写楽の正体が能役者・斎藤十郎兵衛だと、一応の決着が見られているため、指摘のように斎藤十郎兵衛がストーリーに絡んでくるかもしれない。さらに、治済の影武者らしき男が斎藤十郎兵衛ではないか、という説まで出てきている。

 まさに、本作の公式サイトで「笑いと涙と謎に満ちた“痛快”エンターテインメントドラマ!」とうたっている通りの展開。X上での考察も、視聴者が存分に楽しんでいる様子がうかがえる。ここまで、治済の能好きをやたらアピールしていたが、本当に斎藤十郎兵衛が出るとしたら、こんな壮大な前フリはないだろう。

 一方、オープニングで田沼家の用人・三浦(原田泰造/55)が2週連続で最後にクレジットされていた違和感もあり、《定信たちが潜んでいた芝居小屋に三浦の姿がなかったんだよね。定信からの文(手紙)を見て「かかった」と言ったのはどういう意味か…》などと、以前にも一度、スパイ説があがっていた三浦(原田)が怪しいという声も。

 脚本の森下佳子氏は、『ステラnet』(NHK財団、11月30日更新)のインタビューで「三浦スパイ説」について、《それは全く考えていなかったことなので、視聴者の方々の考察の深さに驚いて、「その手があったか」と思いましたね(笑)》とコメントしているので、思わせぶりなミスリードかもしれない。

 ただ、視聴者をドン引きするほど驚かせることに定評のある森下脚本なので、上記のコメントに裏切られる可能性がないとはいえない。最後に三浦が黒幕だったと明かされるとしたら、それ以上のどんでん返しはない。まさに、極上の痛快エンタメになりそうだ。はたして、どんな最終回を迎えるのか、残り2話に注目だ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。