日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回は、SNS上で繰り広げられる現金プレゼント企画の危険性に注目した。
「RTしたら100万円あげます」──そんな投稿を目にして、思わずリツイートしてしまったことはありませんか。
今、SNS上では“お金配り”と呼ばれる現金プレゼント企画が次々と広がっています。一見すると夢のような話ですが、その裏には巧妙で危険な仕掛けが潜んでいるのです。
火付け役となったのは2019年、ZOZO創業者の前澤友作氏が「100名に100万円プレゼント」とツイートしたキャンペーンでした。結果は558万回以上リツイート。社会現象となり、多くの人が希望を抱きました。
しかしその後、似たような企画が雨後の筍のように増え、目的が“善意”ではなく“ビジネス”や“情報収集”へとすり替わっていったのです。
実業家の“青汁王子”こと三崎優太氏、与沢翼氏、ヒカル氏など、SNS上でお金配りを行う著名人は少なくありません。中でも三崎氏は「偽アカウントの被害が急増している」として、現金プレゼント企画を一時中断する事態に。「フォロワーさんを悲しませるわけにはいかない」と、本人も苦渋の決断を明かしました。
一方、実業家の堀江貴文氏はYouTube番組『賛否両論』で前澤氏のお金配りを分析し、こう語っています。
「あれは完全に商売で、前澤くんは天才です。応募してくるのは“養分データベース”なんですよ。かしこい人は応募しない。つまり、何を売っても買う層を、たった10億円程度で把握できてしまうわけです」
堀江氏は、「商材詐欺やオレオレ詐欺に引っかかる人と層が重なっている」とも指摘。つまり“お金配り”は、善意のプレゼントではなく、“マーケティングデータ収集”という現実的な一面を持っているということです。リツイート(RT)やフォローによって投稿が爆発的に拡散する“広告効果”が期待され、企業や個人が宣伝費を抑えながら認知度を高める有効な手法でもあります。
フォロワーとの距離を縮めるきっかけにもなり、正しく運用すればSNSマーケティングの新しい形として一定の成果を生み出す側面があるのは事実でしょう。