■SNS上にはびこる個人情報漏洩と詐欺被害

 しかし、堀江氏が言うように、その仕組みを悪用する動きも後を絶ちません。現金配布をエサに大量のフォロワーを集め、育てたアカウントを転売して利益を得るケースも増加。フォロワー数が多いアカウントほど高値で取引され、買い手の中には企業や広告業者も存在します。ましてや「うまい話に飛びつきやすい人たち」だけが抽出されているのですから、詐欺集団にとっては“お宝リスト”にもなりえるのです。

 法律的には、こうしたお金配りは「オープン懸賞」に分類され、景品表示法には直接抵触しません。購入や契約を条件としていない限り、金額の上限もないのが実情です。SNS運営側も明確に禁止しておらず、グレーゾーンのまま。だからこそ、詐欺師たちが目をつけるのです。

 中でも悪質なのが「架空懸賞型」の詐欺。「当選者にはDMで通知します」として外部から確認できないようにし、応募者を信じ込ませる手口です。DMで「当選しました。振込のために口座番号を」などと誘導し、個人情報を抜き取るケースが報告されています。

 さらにクリックや登録数に応じて報酬が発生する“アフィリエイト型詐欺”もあります。応募者は1円も得られず、情報だけが搾取される構図です。

 なかにはもっと悪質なものも存在します。当選金の振り込みを装って相手の口座を“受け子”として利用、「登録料を払えば当選金がもらえる」と偽る前払い詐欺、「当選者限定の投資情報」を売りつける商法などです。

 SNSはもはや、詐欺師たちの狩り場。知らず知らずのうちに、あなたが“カモリスト”に登録されているかもしれません。

 実際、ネット上でも「前澤さんのは、信頼できるけど、似た投稿が多すぎて見分けがつかない」「“当選しました”ってDMが来たけど、怪しいURLが貼ってあって怖くなった」「お金配りをRTしただけなのに、知らない業者からDMが来た。もう懲りました」といった警戒の声が聞かれます。

「“お金配り”は、人の“希望”と“油断”の間を突く巧妙な仕掛けです。誰もが“もしかしたら”と思う気持ちを利用される。『無料』『簡単』という言葉ほど危険なものはありません。

 リツイート一つで個人情報が売られ、アカウントが商品化される時代です。得をするのは誰か──その視点を持つことが、唯一の防御になります」(生活情報サイト編集者)

 そしてもう一つ、見落としがちな落とし穴があります。仮に本当にお金をもらえたとしても、贈与税の対象になるという点です。年間110万円を超える贈与には税金がかかり、1000万円なら約230万円、1億円なら5000万円以上の納税が必要になります。知らずに使ってしまえば、後から思わぬ請求が届くことも。

 SNSは本来、人と人をつなぎ、情報を共有するための場所。しかし今、その善意を利用した詐欺や情報搾取が巧妙化しています。「タダほど高いものはない」という言葉は、まさに現代SNSの真理と言えるでしょう。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中