■連覇を達成してこそホンマの黄金時代や
しかし、今のタイガースは黄金時代の入り口に立ったに過ぎん。それが証拠に日本シリーズではソフトバンクに負けた。もっと強くならなあかん、ちゅうこっちゃ。ホンマに黄金時代といわれるためには2連覇、3連覇を達成せなあかん。
タイガースが優勝すると、経済効果が大きいと指摘する人も多いし、中には「もはや球界の盟主と言ってもいいんじゃないか」と持ち上げる人もおる。確かに、タイガースの観客動員は12球団1位や。Xやインスタグラムのフォロワー数もトップらしい。甲子園以外のどの球場にいっても、阪神ファンの応援は熱い。
でもなあ、ワシには、どうもピンとこんのや。長いこと「打倒巨人」で戦ってきた気分が今も抜けんのかもしれんな。タイガースはトップに君臨するというより、獰猛なチャレンジャーであればいいと、ワシは思う。百獣の王がライオンなら、タイガースはその名の通り、虎でええやないか。ホンマは虎が一番強いんや。
それと、今はタイガースだけの人気やなくて、野球界全体の人気を考えんとあかんやろう。少子化で、野球をやる子供たちが、どんどん減っとる。しかも、サッカー、バレーボール、バスケットボールと、他の球技の人気が上昇しているのが今の日本や。
大谷翔平の活躍で野球をする子が増えるのは喜ばしい。甲子園を頂点とする高校野球人気も日本の強みや。
でも、プロ野球が盛り上がらんことには未来はない。来年はシーズンの最後まで、ハラハラドキドキするような展開を見たいな。もちろん、ワシはタイガースの連覇を信じとるけど(笑)。
川藤幸三(かわとう・こうぞう)
1949年7月5日、福井県おおい町生まれ。1967年ドラフト9位で阪神タイガース入団(当初は投手登録)。ほどなく外野手に転向し、俊足と“勝負強さ”で頭角を現す。1976年に代打専門へ舵を切り、通算代打サヨナラ安打6本という日本記録を樹立。「代打の神様」「球界の春団治」の異名でファンに愛された。現役19年で1986年に引退後は、阪神OB会長・プロ野球解説者として年間100試合超を現場取材。豪快キャラながら若手への面倒見も良く、球界随一の“人たらし”として今も人望厚い。