■『水曜日のダウンタウン』の影響も

 視聴率がガクンと落ちたが、これは裏番組の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の影響が大きいだろう。過去放送の振り返りとはいえ、新語・流行語大賞に「長袖をください」がノミネートされた、人気企画『名探偵津田』は強い。ただ、ここまで4%台が続いて伸び悩んでおり、失敗ではないながら、本作が物足りなかったのは確かだ。

 前半はテンポの良い逃走劇が展開され、大介(佐野)の元恋人・莉里(影山優佳/24)、裏社会に通じたガン(志田未来/32)の協力と、エピソードも充実。しかし、後半から八神家について描かれることが多くなり、一変してミステリー展開に。「なんだか思っていたのと違う」と感じた人が多かったのではないだろうか。不調の理由はそこかもしれない。

 ミステリーものならば、今期の話題作『良いこと悪いこと』(同局系)のように、考察を煽るスタイルにして盛り上げる方法もあっただろう。しかし、本作はたびたびテロップでネタバラシをするなど、あえて考察路線を外しているように思える。考えさせるより、テンポよく楽しんでもらおうと考えたのかもしれない。

 人に触れると心が読み取れる「さとり」と呼ばれる能力が関わる、結以(桜田)と祖父・恭一(間宮啓行/67)の関係。八神製薬の株を売却した叔母・京(富田)の狙いなど、ネタはたっぷりあるだけに、考察路線ならば、さらに盛り上がったかもしれない。桜田と佐野のコンビ感がすごくハマっていただけに、もったいなく感じてしまう。

 次回で最終回だが、結以の父・慶志(北村一輝/56)と週刊誌記者・白木(山口馬木也/52)が、人生を狂わされたという「さとり」という能力の本質は何なのかなど、明らかになっていない謎は多い。結以と大介の恋の行方とともに、どんな結末を迎えるのか、ラストの盛り上がりに期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。