■長尺の大河ドラマは時代に合わない?
仇討ちは成功し、治済は斎藤十郎兵衛と入れ替えられ、島流しとなった。視聴者の予想の斜め上をいく見事な伏線回収で、江戸市中、江戸城内で広げまくった風呂敷を一気に片付けた。X上では、《写楽爆誕と斎藤十郎兵衛を絡めて、これほど見事な敵討ちを果たすとは、誰が想像できようか。べらぼう史上最大の「そうきたか」を本日くらいました》などと、喝采の声ばかりだ。
とはいえ、これまでの視聴率の全話平均が9%台で、大河ドラマ歴代ワースト2位(1位は8.2%の『いだてん』)になるのは、ほぼ確定だと思われる。今回は、圧巻の展開を称賛する声が多く、まさに「ここまで見てきてよかった」と思えたが、「見てきてよかった」は裏を返せば、見続けないと良さがわからないということだ。
もちろん、中だるみしないよう、あちこちにヤマ場を作りつつ、あとで効いてくる描写をさしこんでいた。ただ、それらは家治が死に際で治済に放った言葉、家基(奥智哉/21)の急死との関係を疑われていた鹿革の手袋、治済の能好きなど、その場ではスッと入ってこない描写だった。そのため、モヤッとした気持ちを抱いて離脱してしまった人は多かったのではないか。
大河ドラマは1年かけてじっくり楽しむものだが、スピード感を求める昨今の風潮には、少し合わなくなってきているのかもしれない。しかし、本作の演者や脚本が高く評価されているのは確か。次回は最終回で、サプライズとして本居宣長役で北村一輝(56)が登場する。どんな「べらぼう」なラストになるのか楽しみだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。