日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。日本の古くからの風習も、時代の流れとともにずいぶん変わってきているようで――。
年末が近づくと、街の空気が少しずつ慌ただしくなり、お歳暮売り場もにぎわいを見せ始めます。その一方で「お歳暮離れ」が進んでいる実態も……。博報堂生活総合研究所による調査では「毎年欠かさず贈っている」と答えた人の割合が2000年には51.2%だったのが昨年には19.0%まで落ち込んだそう。世代別でも差が大きく、60代が38.6%だったのに対し、20代は2.6%にとどまる結果に。企業間で“形だけの贈答”をやめる動きが広がっていることも背景にあり、従来の「お世話になった方へ年末のあいさつとして贈る」文化は確実に衰退しているように見受けられます。
それでも百貨店にとって年末年始は年間の売り上げを左右する勝負どころ。各社は新しい需要をつかみ取ろうと、これまでにない工夫を次々と打ち出しています。
最近よく聞くのが“自分へのお歳暮”という言葉。ネット上では、「自分へのお歳暮で〇〇を買った」という声が多く聞かれます。
松屋銀座では自宅配送限定147アイテムを揃え、切り落としの宮崎牛やカット済みのタラバガニなど「家庭でも使いやすいご褒美食材」を販売。お歳暮を選んでいて「同じものを家にも買おう」と思う“ついで買い”が多かったことから、あえて自分用のラインを打ち出したといいます。年末は自分へのご褒美として財布の紐がゆるむ時期でもあり、こうした流れが後押ししているのでしょう。
東急百貨店も今年のお歳暮から新企画「私に贈る、おいしさ色いろ ごほうびパレット」を始め、バターサンドやローストビーフなどを“特別な日用のごちそう”として用意。SNSでも「今年は自分にいいもの買う」といった投稿が増えており、自分への投資を楽しむ空気が広がっているようです。