■竹内涼真でなければ勝男はなかった
鮎美は店をオープンして大盛況。勝男は引っ越すことにした。予想以上の潔さだったが、勝男も鮎美も人気キャラになっていたのだから、視聴者サービスでもう少し寄り添いあう最後にするのもありだった。それでも、自分だけの足で立つラストを描いたのは、各々の成長や自立に重きを置いてきた制作側の誠実さを感じる。
火曜ドラマなのにキュン要素がゼロだった本作。後輩・南川(杏花/26)が勝男に想いを寄せると匂わせるシーンが、ギリギリでキュンだったぐらいか。また、椿(中条あやみ/28)との男女の友情をごく自然に描くあたりも、令和の現状を描き出そうという意気込みを感じた。
新たな生き方のスタイルを提示するストーリーでは、説明しづらさがあるぶん、堅苦しい雰囲気になったり、なじめずに引っかかってしまいがちだ。だが本作は、勝男の白肌着をはじめ、コミカルな演出を随所に入れることで、きわめて明るく軽快に描かれ、すべての描写がスッと入ってきた。
特に、竹内演じる勝男というキャラの貢献度は大きい。《格好良さ、身長の高さ、スポーツマン、熱さ、筋肉、人懐こさ、全ての魅力が、勝男の嫌な所の裏付けになっている。でも、そんな彼だから、裏表無く、ただ真っ直ぐな勝男の良さにも繋がる》という声もあるが、竹内でなければ、この勝男は生まれなかったし、本作はまったく違うドラマになっていただろう。2025年のMVPといってもいい。
最終回を迎えた途端、《勝男ロスになりそう…いつか特別編を》《成長中の二人はいつか復縁する可能性があるね。続編待つ!》などと、ロスを訴えたり、続編やスピンオフを求める声は多い。一部メディアでは、2027年の正月放送のスペシャルドラマの制作が早くも決定したとも報じられているが、ぜひ実現してほしい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。