■目黒蓮を見ないのはもったいない

 今回も若干、駆け足な展開だったが、目黒が耕一の変化を丁寧に見せていて、しっかり物語が頭に入ってきた。目黒は、WEB情報サイト『ブックバン』(新潮社)の妻夫木と早見氏との対談記事で、本作の出演動機について「これを逃したら学べる機会はないという気持ちの方が大きかった」と語っていた。まさに本作で得たものは大きいようで、回を追うごとに輝きを増している。

 ドラマの内容的には、騎手と競走馬のケガというトラブルをチーム一丸となって乗り越え、準備万端で最終回を迎える流れになっている。この構成の巧みさはさすが日曜劇場なのだが、第9話までの段階の全話平均が10.5%と、残念ながら視聴率の数字は同枠の水準にともなっていない。

 また、X上で多く目につくのが、《片目を失明しても勝利した馬といえば、ルーベンスメモリーという好例があるな。鞍上の柴田善臣騎手のインタビューも好印象》《今日のソーパーフェクトの日本ダービーはドゥラメンテの日本ダービーだったね!マジで泣きそうだった》などの、競馬ファンと思われる“マニアックな声”だ。

 今回も、調教の舞台裏を見せたり、騎手を細かく描写するなど、競馬ファンには刺さったようだ。一方で、一般視聴者には競馬という要素はなじめなかったのかもしれない。今回も翔平が復活するフォームの変更のくだりがあり、競馬ファンの心はくすぐるが、はたして一般視聴者が同じ反応をするかどうかは微妙だ。競馬ファンを取り込めた収穫はあるだろうが、プラス・マイナスで言えば、マイナスが若干大きかったかもしれない。

 とはいえ、今、乗りに乗っている目黒を見ないのはもったいない。競馬になじめないなどの問題は抜きにしても、最終回は見る価値がある。数え切れぬ挫折を乗り越え、有馬記念の舞台に立つという夢に向けた、栗須(妻夫木)と耕一(目黒)たちの人間ドラマに熱くなれるはずだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。