■「大人用のオムツ」の実力とは
映画を観る日は家を出る前に、オムツに履き替え、その上から念のため汚れてもいいジーパンを履く。濃いめのデニムなので、「事故」があっても目立たないはずだ。
記者は今のところ鑑賞中に尿もれを経験したことはないが、それでも普段は上映前に必ず用を足すようにしている。だが今回は上映直前に映画館へ着いたとあり、トイレへ行くことはかなわなかった。
館内には、思ったよりも人が多かった。中央や前のほうの席はポツポツと埋まり、記者の真後ろも、あとから席を取った3人組の来場者が陣取っている。
やがて館内が暗くなり、予告編に続いて本編の上映が開始。
その後、上演が開始して1時間半ほど過ぎたあたりで、劇場内に動きがあった。記者の後ろに座る観客の1人が、長丁場にしびれを切らしたのか、席を立ったのだ。
よく見ると、前のほうの席でも、中座する客がいる。
彼らはいずれも数分で戻ってきたので、トイレに行っていたようだ。
いいシーンだったのに、もったいない。オムツを履いて銀幕に臨んでいた記者は、自分が勝ち組のような気がして、妙な優越感があった。
しかし、そんな記者の体にも、上演2時間にさしかかる頃から異変が。だんだん膀胱のあたりが張ってきて、ガマンができなくなってきたのだ。
しかし、スクリーンではちょうど、BGMも流れない緊迫したシーンが映し出されている。ここで用を足したら、音が響くかもしれないと思い、もうしばらく我慢することにした。
映画は佳境に。吉沢亮がビルの屋上で踊るシーンでは観客の魂を揺さぶるようなサントラが劇場内に鳴り響く。そのタイミングで記者の膀胱も限界に達した。
最初は股間が急に熱くなり、やがてその熱がスッと引いていく感覚があった。オムツの中がペッチョリするのを予想していたのだが、思いのほかサラサラしている。ちょっと腰を持ち上げると、水分を吸収したパッドが少し重くて、いつもと比べ違和感があった。
一滴もオシッコは漏れていなかったのだ。上映後、念のために映画館のシートを確認したが汚れや染みはどこにもなかった。
終電も近かったので、そのままどこにも立ち寄らず、オムツを履いたまま電車に乗り、帰宅。その後はあらかじめ区のホームページで調べておいた方法でオムツを処分し、ズボンを洗濯し、シャワーを浴びて寝た。
ちなみに、磯野氏に一回のトイレでどのくらいの量のオシッコをするのか尋ねたところ、
「一般的な成人の1回の尿量は、200~400ml程度です」
とのことだった。
「尿意がなくても、上映開始直前に必ずトイレに行き、膀胱を空にしておく習慣をつけましょう」(前同)
というわけで、オシッコが不安で映画やコンサート鑑賞に尻込みしている皆さん、大人用のオムツがあれば最低限のピンチは乗り越えられます。ただし、事前のトイレは忘れずに!
磯野誠(いその・まこと)
所沢いそのクリニック院長、泌尿器科医。医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器腹腔鏡技術認定医などの資格を持つ。年齢や性別を問わず患者が元気で豊かな生活を送るために医療・衛生の側面からサポートを志す。趣味は研究活動とアコーディオン。