■可能性を感じさせた手越祐也と白鳥玉季
視聴者からは、ドラマの内容に対して絶賛の声が多い。今まで演じることのなかった不器用なキャラで新境地を見せた及川、抑えめかつ丁寧な演技で俳優の可能性を感じさせた手越、圧倒的な存在感と演技の幅を見せきった白鳥と、キャストも魅力的だ。それでも、配信サービス・TVerのお気に入り登録数は41万台と低調。なぜだろうか――。
まず、“BL作品”というレッテルで離れたのはあるだろう。それに加え、本筋が少しふわっとしていたのもあるかもしれない。玄一、索、ほたるの関係と同時に、3000万円の行方というのが縦軸にあったが、母親の逃亡劇はのんきだし、お金の争奪戦も終始ドタバタ。最終的に3000万円はどうでもよくなってしまった印象で、ここの引きが強ければ少しは変わったかもしれない。
また、展開的にも唐突なところがあった。今回の仁と松のように、やたらにばったり会ったり、周辺人物がメインの3人と無関係に仲良くなったり、クセが強いところがあったのは事実。登場人物の心情を丁寧に描いた良作だが、作品の世界観にハマれないと、なんだかリアリティのないドラマに思えてしまうかもしれない。
配信の数字は低調に終わったが、俳優陣の演技は素晴らしく、2023年度の「日テレシナリオライターコンテスト」で審査員特別賞を受賞した新人・松本優紀氏も、デビュー作とは思えぬほど心に深く刺さる脚本を作り上げた。今期の中で“見るべきドラマ”のひとつだと思うのだが、なんとももったいない結果に終わってしまったのは残念だ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。