■期待したい目黒蓮の今後
伏線がパタパタときれいに収まっていくのは、日曜劇場らしさと言える。原作に手を加えつつ、ドラマチックに終わらせてみせた。ただ、第7話で椎名(沢村)が耕造(佐藤)に渡した茶封筒が、ビッグホープの登場に繋がったのは、すでに多くの考察で言及されており、大ネタというほどのことではなかった。
X上では否定的な声は少ないが、視聴率とともに配信サービス・TVerのお気に入り登録数も90万台止まりと、日曜劇場にしては物足りない数字なのは確か。最終回もロイヤルファミリーの引退撤回までを、もう少し描いてもよかったではないかと思うが、長い原作をまとめるのには仕方ない。決まった尺の中でレースを同時に描く以上、ドラマとしての薄さは避けられなかった。
そんな中で、光ったのは耕一を演じた目黒蓮。父・耕造(佐藤)の面影を残しながら、ひとりの青年の成長を確実な演技で表現していた。WEB情報サイト『ブックバン』(新潮社)の妻夫木と早見氏との対談記事で、本作の出演動機について「これを逃したら学べる機会はないという気持ちの方が大きかった」と語っていたが、佐藤や妻夫木に囲まれ、俳優として大きくステップアップしていた。
また、日曜劇場という固定ファンの多い作品で、広い層の視聴者にアピールできたのも大きい。今作はドラマファンだけでなく、競馬ファンも見ていて、より多くの人に俳優としての魅力を知ってもらえたのは大きなメリットだった。今後、日曜劇場主演も十分にあると思われ、この知名度拡大は良い効果を呼びそうだ。
視聴率、配信は微妙な数字で終わったが、目黒にはメリットだらけの作品だった『ザ・ロイヤルファミリー』。ハリウッドドラマ『SHOGUN 将軍』シーズン2のオーディションで、新キャラクター・和忠役を射止めたと発表されているが、本作の経験を活かし、さらなる活躍を見せてくれるだろう。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。