■法的にはすぐに違法とは判断されない

 No.1広告が厄介なのは、根拠が分かりにくくても、法律的にはすぐに違法とは判断されない点。景品表示法では、表示が“著しく優良であると誤認させるかどうか”が判断基準となるため、「イメージ調査による1位」と明記されている場合は事実と異なると断言しにくく、処分のハードルが高いこともあります。

 とはいえ、使ってもいない人の想像で作られた1位が商品の質を正しく示しているはずもありません。調査方法の曖昧さや、比較対象の偏りといった“表示の抜け穴”こそが、No.1広告の大きな問題と言えます。

「法律的な線引きを整理すると、さらに複雑さが浮かび上がります。実際には1位でない商品に『1位』と表示すること、最新ではない古いデータを現在も続く実績のように見せること、ごく一部の製品だけを比較して“総合1位”と印象づけること、1位になるまで条件を変え続けてその経緯を明かさないことなどは、景品表示法上は“アウト”の可能性が高い行為です。 

 一方で、『イメージ調査1位』といった印象評価を基にした表示や、少人数調査でも事実として数字が正しいケース、脚注で条件を示しているケースなどは、法律上はすぐに問題になるとは限らず、“セーフ”に分類されがち。しかし、消費者に誤解を招きやすい点では、広い意味でのグレーゾーンと言えます」(生活情報サイト編集者)

 数字の「1位」はとても強い言葉で、迷ったときの判断材料になりやすいものです。しかし、その裏側にある調査方法や対象範囲を見なければ、簡単に誤解してしまいます。

 だからこそ、広告に並ぶ“1位”をそのまま鵜呑みにするのではなく、どんな基準で導かれた評価なのかを一度立ち止まって確かめる視点が欠かせません。見えている数字だけで判断しないことが、より納得のいく買い物につながるはずです。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。