217.1キロの距離を2日間かけて10人の大学生がタスキをつなぐのは、お正月の風物詩である箱根駅伝だ。今季もまた、大学最速を決める激戦の幕が上がる。

 1984年のロス五輪と、88年のソウル五輪に2大会連続で出場した元マラソン日本代表の瀬古利彦氏が、今大会の見どころを語る。

取材に応えた瀬古利彦氏

「青山学院、駒澤、国学院、中央、早稲田の5校を中心に優勝争いが展開されるのでは。もちろん、他にも有力な大学はあるので状況次第で優勝争いが、どう転ぶか分からない。白熱したレース展開が期待できます」

 瀬古氏が5強の中で大本命に挙げるのは、3年連続9回目の総合優勝を狙う青山学院大学だ。チームを率いる原晋監督が本サイトの取材に応える。

意気込みを語る原晋監督 ※撮影/編集部

「前回大会の後に学生たちには、このままだと来年の箱根駅伝で勝つ確率は0%だと伝えました。じゃあ、勝つためには、どうするか。
 主将の黒田朝日(4年)を中心に猛練習を重ね、11月のMARCH対抗戦で昨年以上の成果が得られた。箱根で優勝できる組織に変わったなと感じています」

 原監督も全幅の信頼を寄せる黒田選手は、各校のエースが集う“花の2区”を3年連続で走る予定だ。黒田選手が意気込みを明かす。

チームを引っ張る黒田朝日選手(写真右) ※撮影/編集部 

「各校の一番の実力者が集まってくる区間なので、そこでの勝ち負けがチームの流れにすごく影響する。過去2度走って、区間1位、3位と非常にいい走りができたので、自分に合ったコースだと思っています」

 ロス五輪マラソン女子日本代表でスポーツジャーナリストの増田明美氏は、次のように言う。

「黒田さんは、お父さんが箱根経験者の長距離ランナーというサラブレット。腕時計をつけないで、タイムよりも相手との勝負を大切にする、スケールの大きい走りをするので、箱根での激走に期待です」

 前哨戦となる10月の出雲駅伝で7位、翌月に行われた全日本大学駅伝では3位に入り、箱根へ向けて勢いに乗る“絶対王者”。その前に立ちはだかるのは前回大会2位の駒澤大学だ。

 原監督も「優勝への一番のライバル」と、その実力を認める。チームの要は、1500メートルと3000メートルの高校日本記録を持つエースの佐藤圭汰選手(4年)だ。前出の増田氏が話す。

「佐藤さんは夏前に負傷したんですが、全日本大学駅伝で戦線復帰。7区を区間3位で走り、チームの優勝に貢献しました。
 私も現地にいましたが、ケガを克服して、世界レベルの走りを取り戻した印象です。駒澤の藤田敦史監督も、全日本大学駅伝の優勝に気を緩めず、箱根に向けて戦闘モードでした」