■今田美桜と河合優実の立場の違い
また、第22週「愛するカタチ」では、蘭子(河合)が壁にかけてあった豪(細田)の半纏を見つめ、詩を口ずさみながら涙を流したり、三女・メイコ(原菜乃華/22)が夫・健太郎(高橋文哉/24)への秘めた願いを明かすなど、蘭子とメイコがフィーチャーされる回もあり、ますます、のぶ(今田)の立ち位置が地味になることも。
しかし、存在感がなかったかといえばそうではない。特にドラマの後半、今田のふるまいには、どっしり構えた、貫禄や余裕のようなものが感じられていた。のぶ自体はあまり動いていないのに、ずっとどこかにいるようだったのだ。ドラマの現場をリードする、主演俳優としての“座長感”が、後半に来て急に増してきたのだろう。
そもそも、のぶが嵩(北村)を支えるというのは、『あんぱん』の基本的な構図だ。誰も認めてくれない、アンパンマンの原型となる“おじさんアンパンマン”の絵を、好きだと言って励ましたり、ラジオドラマを描くことを後押しするエピソードで、やっと、のぶが本当にのぶになったと言える。
第21週「手のひらを太陽に」では、のぶが「何者にもなれんかった」と秘めた思いを吐露し、嵩が「僕たち夫婦は、これでいいんだよ」と、優しく肯定するシーンがあった。ヒロインが何者かになるのが朝ドラの定番であるなか、何者にもならないかったとはっきり明言するのは、実は異例なこと。河合が目立つ裏で今田は、これまでにないヒロインを見事にまっとうしたのだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。