日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今、戸田氏が注目するのはわざわざ濃縮タイプ飲料を購入して、自宅でドリンクバーを楽しむ人たちが増えている事情だった――。
最近、SNSや店頭で存在感を増しているのが、炭酸水や牛乳で割って楽しむ濃縮タイプの飲料です。ネスレ日本の『ネスカフェ エスプレッソベース』は大手通販サイトの楽天で500mlが429円、約15杯分つくれるため1杯28.6円とかなりお手頃価格でコーヒーを楽しめます。調査会社インテージの調べによれば濃縮コーヒー市場は2024年に約70億円規模と17年の約2倍にまで成長し、コロナ禍のステイホームをきっかけに、自宅で好みの味を作る楽しみが広がりました。
濃縮飲料が支持される理由として、コスパの良さ、省スペース性、アレンジの自由度が挙げられます。ボトル1本で10~15杯作れるため保存もしやすく、飲む人ごとに濃さを調整できるところも魅力。こうした追い風を受け、サントリーが24年4月に発売した『おうちドリンクバー』シリーズは大ヒットし、発売後3か月で前年同期比約1.7倍の売れ行きを記録しました。POPメロンソーダやC.C.レモンなど既存ブランドをベースにしており、味への安心感と“自分で作る楽しさ”が両立しています。推奨の割合は原液1:炭酸水4で、家でもドリンクバーのような体験ができる点が好評です。
ただ、こうした“割るタイプ”を商品化するにはハードルもあったといいます。
「開発担当者は企画段階で“炭酸飲料は完成品が売っているのに、なぜひと手間かける必要があるのか”と問われたそう。そこで示したのが“タコパ”の発想だったといいます。たこ焼きは買ったほうが手軽なのに、家族や友人と一緒に作ることで、味以上の楽しさが生まれます。濃縮飲料も同じで、合理性より“遊び心”や“共有の時間”といった情緒的価値が受け入れられたと言えます。実際にSNSでは“コーラ+メロンソーダ”のような組み合わせが話題で、誰かに見せたくなる飲み物としても広がっているのが特徴です」(飲食サイト編集者)
アレンジの幅の広さも魅力で、C.C.レモンやメロンソーダを牛乳で割る『CCレモンラッシー』や『POPメロンミルク』など、家にある材料だけで新しい味を作れる面白さがあります。かき氷にシロップのようにかける人も多く、濃縮だからこそ楽しめる濃さが人気です。ネスレではHP上で50もの『ネスカフェ エスプレッソベース』を使用したアレンジレシピを公開しており、『ピーナッツバターコーヒー』や『いちごミルクコーヒー』など一風変わったレシピも。担当者おすすめの『アップルジンジャーコーヒー』は、コーヒーにアップルジュースとジンジャーエール、ローズマリーを合わせた爽やかな一杯で、夏向けの新定番になりそうです。