■一人暮らしの狭いキッチンでも置き場所を取らない

 こうした盛り上がりを受け、『おうちドリンクバー ペプシコーラ』(348円)も発売されました。既存のペプシをそのまま濃縮したわけではなく、割っても“ペプシらしさ”が保たれる味わいに調整するため半年以上レシピ試作を続けたとのことで、メーカーの本気度が伝わってきます。気分に合わせて濃さを変えられ、しかも味の軸はブレないという新しい飲み方が若者にウケているようです。

 濃縮飲料の広がりは、ネット上でも大きな話題になっており、《保存がきくから、部活帰りに友達といろいろ混ぜて遊べるのが楽しい》《炭酸水メーカーを買ったので、濃縮タイプとの相性が良くて助かる。甘さを調整できるのがいい》《外で飲むより家で好きな味を作れるほうが満足感ある》という投稿も。若い人ほど“自分でカスタムする体験”に価値を感じている様子が伝わってきます。

「自分で調整でき、写真映えも狙える飲み物はSNSとの相性が良く、口コミで広がりやすい。また、ボトルが軽くて置き場所を取らないため、家族で好みが違う家庭や狭いキッチンの一人暮らしでも無理なく取り入れられます。濃縮飲料は今後、“自分のレシピを持つ人”が増えることで、より文化として定着していきそうです」(前出の飲食サイト編集者)

 家での時間が多様化する中、濃縮飲料は“飲むだけのドリンク”から“体験としてのドリンク”へと進化しています。好みの一杯が見つかれば、日常のひとときがもっと豊かになるはずです。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。