日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回、戸田氏が注目するのはネット社会の暗部だ!
皆さんは「ダークパターン」という言葉をご存じでしょうか。ダークパターンとは、消費者を気づかないうちに不利な選択へ誘導するべく作られたウェブデザインのこと。近年、ネットサービスが生活に深く入り込むなかで、この仕掛けは以前よりもはるかに巧妙になっています。気づいたときには手遅れ、というケースも増えており、被害額は年間1兆円規模に達すると推計されているほどです。
まず目立つのが、利用者の焦りを誘う手法。「残り1点」「あと5分でセール終了」といった画面上の表示に急かされ、つい購入してしまった経験はないでしょうか。ところが、実際には在庫が十分あったり、カウントダウンが読み込みのたびにリセットされる例も見られます。このようなユーザーの心理を揺さぶる演出は非常に多く、旅行予約サイトの「今この宿を◯人が閲覧中」という表示の信頼性も不透明なままです。冷静な判断をしづらい状況をつくり、誤った選択へ導きやすくする仕組みだと言えるでしょう。
口コミ風の画像や“No1”表記も注意する必要があります。写真つきのレビューが本物に見えても、小さな文字で「※画像はイメージです」と書かれていることがあります。ランキング1位と書いてあっても、その根拠が不明確だったり、調査方法が偏っていたりする場合も珍しくありません。「多くの人が支持している」と錯覚させ、購入の後押しをしようとする意図が透けて見えます。
さらに厄介なのが、ひっかけ型の設計です。「キャンペーンのお知らせを希望しません」にチェックを入れると“希望しない”という意味になりますが、多くの人はチェック=希望と判断しがちです。そのため、知らぬ間にメルマガを受ける設定になってしまうケースもあります。また、初期設定のまま手続きを進めると定期購入が選ばれる商品も多く、「初回550円のつもりが数万円の請求になった」という被害が後を絶ちません。スマホ画面では説明が折りたたまれていたり、スクロールしないと見えない場合もあるため、気づきにくいことが影響していると考えられます。
ネット上でも《解約ボタンがどこにあるのか分からなくて30分探しました。わざと隠してるんじゃ…と思いました》《“残り1点”が毎日表示されていて、流石に信用できなくなった》《スマホで見ると細かい注意書きが読みづらい》《初回だけ安いと思ったら自動更新だった》といった声が聞かれ、ダークパターンに騙されたことがある人も少なくないようです。
特に多い不満が「解約のしづらさ」です。契約は簡単なのに、退会だけ妙に複雑だったり、電話でしか受け付けていなかったり、平日の昼間だけだったりという企業もあり、利用者が諦めてしまうことを期待しているのでは、と感じてしまいます。