■年末年始の「定番の食卓」にも大きな変化が
食の習慣にも、物価高を背景にした変化が表れています。かつては年末になると、おせち料理をフルセットで用意し、重箱に詰めて正月を迎える家庭が多くありました。
しかし近年は、黒豆や数の子など「食べたいものだけ」を選び、市販のおせちや単品料理を組み合わせる家庭が増えています。材料費の上昇に加え、調理の手間や時間をかけないという考え方も広がり、「ゆっくりする正月」を選ぶ人が目立つようになりました。おせちは欠かせない行事というより、余裕があれば楽しむものへと位置づけが変わりつつあります。
同じ流れは、年越しそばにも及んでいます。大晦日の定番として親しまれてきた年越しそばですが、「必ず用意するもの」と考えない人が増えてきました。
外食費や食材費を抑えたいという意識が強まり、「大晦日は家で簡単に済ませる」「そばにこだわらない」といった選択が自然になってきたためです。食文化そのものが軽視されているというより、物価高の中で支出の優先順位を見直す動きと言えるでしょう。
ネット上でも、《物価高だから年末年始は無理しない》《行事を減らしたら出費がかなり減った》《節約しても気持ちまで貧しくなるわけじゃない》といった声が見られます。一方で、《できる範囲で伝統は残したい》という意見もあり、懐事情と文化のバランスをどう取るかが課題になっています。
「年賀状や大掃除、年越しそばは日本の文化として大切にされてきましたが、それをどう守るかは人それぞれ。形式を完璧にこなすより、無理をしない選択をする。そうした判断が積み重なり、年末年始の過ごし方は今後さらに多様化していくでしょう」(前出のライフスタイル誌編集者)
全国一律で同じ行事をこなす時代から、それぞれが自分に合った年末年始を選ぶ時代へ。華やかさは少し減るかもしれませんが、その分、気持ちに余白が生まれる。そんな変化が進んでいるようです。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。