■吉沢亮がいてこその『ばけばけ』

 直近で出色だったのが、トキ(高石)とヘブン(トミー)の告白シーン。メインの2人ではなく奥にいる錦織(吉沢)にピントが合うと、言葉なくとも絶妙な表情の演技を見せていた。X上では、《錦織さん、あの「なに見せられてんの…?」みたいな表情、吉沢亮さんのコミカルな演技がよかったですね》などと、大きな反響があった。

 また、《錦織さんのリアクションや感情表出が視聴者のガイドの役割も果たしている》という指摘もあるが、まさにその通り。もし吉沢が錦織を演じていなかったら、やたらふわふわとしたドラマになっていたはず。細かな機微を描いていくシーンが多い作品だが、吉沢がいたからこそ、物語の、そしてトキの輪郭がくっきりしたのだ。

 コミカルなシーンも多い本作だが、ポイントポイントで錦織がしっかり持っていっている。「取り込み中というのは、取り込み中ということだぞ」、「松江のこれからのことや、これからの松江のことや」といった“錦織構文”など、スマートなポンコツさは『ばけばけ』の世界になくてはならない。ただいるだけで面白い存在感は、もはや裏主役と言える。

 史実では、錦織のモデルの西田千太郎は結核で若くして死去している。これまで、主要な登場人物では、トキの実父・雨清水傳(堤真一/61)しか死での退場はなかったが、もし錦織の病死が描かれるとしたら、とんでもないロスが起こりそうだ。錦織の今後がどうなるのか、注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。