運命が決まる受験シーズン。なかでも年々激化が話題になるのは中学受験だが、近年はその入試問題が「難しすぎる」と話題だ。質はもとより、問題の分量も膨大になっているという。現に、筑波大学附属駒場中学校では2020年の入試では2.5ページだった算数が25年には4ページと倍近くにまで増えている。子供の勉強を“監督”する立場の保護者からは、もはや「大人でも解けない」「さっぱり分からない」という悲鳴が上がる。

「10年前には、子供たちは限界を迎えていたと思います。質も量も小学生ができるものじゃない」

そう語るのは、『なぜ中学受験するのか?』(光文社新書)、『中学へ旅立つ君へ』(実務教育出版、2月6日刊行予定)など、中学受験にまつわる著書を多数手がける教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏である。なぜ、中学受験は「難化」するのか――おおた氏はまず、「学校と塾のいたちごっこという構造」があることを指摘する。

「塾は、入試対策が仕事です。新しい問題が登場する度に対策を教えるので、それをパターン学習として暗記する子が大量発生する。すると学校は学校で、解き方を丸暗記する力よりも、初めてみた問題にどれだけ食いつけるかという力を試すようになるわけですね。結果的に、単純に早く正確に解答を導き出す問題よりも、思考の道筋を問う問題が増えてゆきます。そのため学校によっては、解答にたどり着かなくても細かい部分点をつけるなど、採点の仕方に学校それぞれの価値観があらわれるでしょう。だけど塾はそれすらパターン化して子どもに教えてしまう。学校と塾のいたちごっこという構造がここにあります」(おおた氏=以下同)

 かくして、問題の複雑化が加速度的に進む。

「特に図形はいくらでも難しくすることができます。文章題も、前提となる条件を複雑にしたり、特殊算をいくつか組み合わせたりして、“そこに気がついて初めて解法のカギが開く”ような問題をつくる。算数に限らず、必要な情報を抽出する能力を問うものが増えました。単純な対策をされないためには、どんどん複雑にするしかないわけです。並行して、今は教育界全体で問題文が長文化する傾向があります。センター試験から大学入学共通テストになって出題傾向が変わり、問題が長文化しているのが象徴的です」

 さらに塾同士の競争が苛烈化した。

「あっちがそこまで教えるならうちはここまで教えます、というアピール合戦が始まりました。その象徴がSAPIXの教材と四谷大塚の予習シリーズですね。どんどん学習の前倒しがおこなわれ、そうした塾同士の競争が子供たちへの負荷を大きく、加速させているのが実態です」