■夕食後の余暇時間に『毀滅の刃』を視聴!
聞きしに勝る刑務所の熾烈な住環境。食事も以前は過酷だった。傷害事件で服役経験のあるU氏が言う。
「昭和の頃は、質の悪い米と麦を混ぜた麦飯だった。米の保存状態が悪いのと部屋の便所の匂いが混ざって、文字通りの“臭いメシ”。おかずも漬物中心で、栄養も不足、身体の弱い受刑者はすぐ、風邪を引いてたよ。
そんな中でも唯一の楽しみが大晦日の夕食に出る折詰のおせち。その日はカップ麺の年越しそばも出るし、甘いものも出るんで本当に楽しみだった」
嗜好品も規制される昭和の劣悪な食環境は、ずいぶん改善されたようだ。
「最近では歯の悪い受刑者のために、おかずを刻んで提供したり、質素ではあるものの栄養のバランスも考慮されるようになりました。服役前より健康になる受刑者もいるとか。刑務所も服役中の食事を体験できるイベント開催したり、改善ぶりをアピールしていますね」(全国紙社会部記者)
生活の細部においても、改善が進んでいる。引き続き前出のT氏に聞いてみた。
「まずは行進ですかね。歩くときは指を引っ付けてピーンと伸ばすのが基本。これぞ刑務所という処遇ですが、このルールも変更され、もう軍隊みたいに歩かなくてよくなった。
別の話だけど、夕食後の余暇時間にアニメの『鬼滅の刃』を見られたときは感動したね」
軍隊方式の改善は、これだけでない。
「行進うんぬん以前に“気をつけ”もなくなりました。これは地味に大きい。正直、こちとら小学校時代から、“気をつけ”を無視してきたタイプなんで(笑)」
さらに、『怒鳴らない』『叫ばない』『叱責しない』などといった処遇変更もなされているという。すべて“社会で望ましいとされていないことはしない”を、前提とした変更のようだ。
「受刑者の社会復帰を重視した処遇改善は、大いになされるべきだと思う」
とは、裏社会の深部にまで取材が及ぶジャーナリストの山田文大氏の弁。
「刑務所は悪のネットワークを構築するのにベストな環境と聞きます。劣悪な環境だから、それが起きる。そして、出所後、そのネットワークが機能する。それが再犯率5割の実態だと思う。
不調を訴えた被収容者を、すべてロキソニンで対応するという雑な扱いを一つ変えるだけで、地味に再犯率を下げる遠因にはなるかもしれない」(前同)
しかしながら、単に処遇を甘くして、文字通り“別荘”代わりの居心地を与えるのが正しいはずもない。
ともあれ、刑務所も大きな転換点に立っている。
山田文大(やまだ・ぶんだい)
編集者・週刊誌記者を経て、裏社会に精通するジャーナリスト。著書に『実録!「裏稼業」騙しの手口』などがある。