1月27日、ついに上野動物園の双子パンダが中国に返還される。
これにより、日本は54年ぶりに「パンダのいない国」となる。パンダが再び来日する可能性は残されているものの、中国からの新たな貸与は不透明とあって、上野動物園では名残を惜しむファンが連日、長蛇の列を作っていた。
だが、他にも別れが確定している動物がいる。
ラッコだ。
水面に仰向けで浮かび、胸の上で貝を割る――。その愛らしい仕草は、かつて日本中を虜にした。仔ラッコを主人公にしたアニメ『ぼのぼの』のヒットも追い風となり、1990年代の全盛期には、国内で120頭以上が飼育されていた。
ところが現在、日本でラッコをナマで見られる場所は、鳥羽水族館(三重県鳥羽市鳥羽3丁目3−6)、ただ1か所のみ。しかも残されているのは、キラ(17歳)とメイ(21歳)というメス2頭のみだ。
「ラッコの平均寿命はおよそ20歳前後。キラもメイも高齢ゆえ、繁殖は不可能です」
そう残念そうに語るのは、同水族館で42年間にわたりラッコの飼育に携わり、「ラッコのおじさん」の愛称で知られる石原良浩氏だ。
なぜ、ここまで数を減らしてしまったのか。石原氏に聞いてみた(以下、コメントは石原氏)。
「まず、日本の水族館で増えたラッコのほとんどは、アメリカから輸入した『アラスカラッコ』です。輸入個体を繁殖させて数を増やしてきましたが、アメリカの海洋哺乳類保護法や絶滅危惧種法の影響で、1998年を最後に輸入が止まりました。
新しい個体が入らなくなって以降、最初に繁殖していた個体が減り、世代を重ねるごとに繁殖に参加できる数も減っていった。その結果、日本のラッコは高齢化し、静かに数を減らしていったのです」
高齢とはいえ、鳥羽水族館に残された2頭は驚くほど元気だ。週末ともなれば、観覧は行列必至。餌やりの時間に飼育員と向き合う姿はSNSでも拡散され、いまなお高い人気を誇っている。
その長寿の裏には、石原氏らスタッフの徹底した工夫と努力がある。
「水族館の水槽は野生より狭く、運動量が落ちやすい。そこで、あえて取りにくい場所に餌を置き、強く水を蹴ってジャンプしないと届かないようにしています。
筋力や関節、動きの変化を毎日確認し、食べる行為そのものを運動にしているわけです。
寿命を迎える瞬間まで、自分の意思で体を動かせる状態を保つ――。それが飼育員の責任だと思っています」