■北海道にも野生のラッコはいるが…

 ちなみに、日本の海には、野生の『チシマラッコ』が生息している。チシマラッコを水族館で飼育することはできないのだろうか。

「チシマラッコは、もともと北海道に多く生息していましたが、明治時代に毛皮目的で乱獲され、絶滅寸前まで追い込まれました。日本では1912年にラッコを守るため、国内法として『ラッコ・オットセイ猟獲取締法』が制定されました。この法律は今も残っていて、チシマラッコは絶滅危惧種となっているため捕獲できない状況にあります」

 近年は北海道沿岸で再び姿を見せ始めているというが、

「ラッコはウニやカニ、貝を食べます。ラッコがいなくなった後に沿岸漁業が発達した地域では、漁師さんとの摩擦は避けられない。海外では害獣扱いされている地域もあるくらいです。管轄である水産庁は漁業者側の立場を取っているため、制度を見直すところまでは至っていません。そのため、チシマラッコを日本の水族館で飼育するという段階には至っていないのが現状です」

 最後に、石原氏はこう訴える。

「ラッコは非常に繊細で、環境が変わるとすぐに命を落としてしまう動物です。

 飼育をやめてしまえば、これまで積み重ねてきた技術は継承されず、将来、保護すらできなくなるかもしれません。だからこそ、残されたラッコは映像ではなく、ぜひ生で見てほしい。元気に動く姿を、直接その目で見てもらいたいですね」

 水族館でラッコが見られなくなる日は迫っている。それまでに、ラッコの元気な姿を自分の目に焼き付けておこうではないか。