■ゆっくり確実に変化していく『ばけばけ』
新聞記事をメインに展開したが、サワとなみ、特にサワが第16週のトピックで、週タイトル「カワ、ノ、ムコウ。」では、借金や学歴がないことからくる格差が重く描かれた。主人公はトキだが、物語が内包するこの時代の生きづらさは、この週のように周辺人物のフミ(池脇千鶴/44)、タエ(北川景子/39)も含む女性たちに背負わせて、深みのあるストーリーが展開されている。
そもそもトキとヘブンは、「急速に西洋化が進む明治の日本の中で埋もれてきた名も無き人々の心の物語に光をあて、代弁者として語り紡いだ夫婦」だ。メインこそトキとヘブンだが、物語の背骨はサワやなみをはじめとする、“名も無き人々”である周辺人物。特にサワの川の向こうに行こうともがく第16週の姿は、朝ドラヒロインのように見えた。
本作は「なにも起こらない」とは言いながらも、登場人物たちはしっかりと変化し、動いている。第20週(2月16日)から熊本編が始まるが、放送期間は1か月ちょっとになるようだ。ということは、第17週(1月26日)から松江を出るまでの3週間が、物語のヤマになるかもしれない。
番組タイトル『ばけばけ』とキャッチコピー「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」には、“うらめしいものがかけがえのない素晴らしいものに化けていく”という意味が込められている。サワもなみも時代の変化を乗り越え、しっかり化けてほしい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。