■住宅ローン以外が組めなくなる可能性も…

 伊藤氏は、まず残クレ型の住宅ローンのメリットとして、「“家を買う”あるいは“ちょっと贅沢な家に住む”という選択肢が視野に入ってきやすくなるのはたしか」だという。

「たとえば、タワマンに住んでみたいけど今の収入では通常のローンを払えるか心配、というミーハーな人にはいいシステムですよね。残クレ型の住宅ローンであれば審査が通り、ローンが下りる人は出てくるでしょうし、残価分を後回しに考えられるので、“家を買う”というハードルが下がり、賃貸派だった人が購入へと流れるケースは増えるかもしれません」(伊藤氏=以下同)

 ただし欠陥もある。

「残価リスクを考慮すると、通常の住宅ローンよりも金利が高めに設定される可能性があります。また、買い替え前提ならいいのですが、問題は継続して住み続ける場合の利息分です。残価以外の元金と利息を支払い終え、契約期間終了後も住み続けるという選択を取った場合、残価にかかる利息は支払わなくてはならず、今後、住宅ローンの金利は上昇することが”既定路線”に思えることを考えると再ローンを組む際に総利息分がふくらむ可能性は否めません。

 また、ローンを組んでいるとなると、他でお金を借りる時にリスクが出てきます。元々負担に見合った収入があればいいのですが、残クレ型だからと背伸びをして購入してしまった場合、たとえば車を買いたくなった時に買えない、といったケースは想定されます」

 さらに伊藤氏は、「いくらこうした制度ができたとしても、格差が進むのでは」と話す。なぜか。

「今、外国人による投資目的のマンション購入が増えていて、新築だけじゃなく中古の価格も上がっている。全体の物価が上がっているなかでは賃貸物件の家賃だけでなく、生活費も上がっています。その上がり幅は、どうしても地価が高い都心のほうが影響が大きい。そうなると、たとえばこれまで以上に都心に住むのは難しくなり、格差が広がっていきます。

 国はインフレ前提だから残クレという発想が出てくるのでしょうけど、身の丈にあった住宅ローンを選ぶべき。残クレでの住宅ローンは、仕組みとしてあっていいとは思いますが、目の前の“お得”さだけに釣られないようにしたいものです」

 お得に見えるものには、必ずそのリスクがあることは覚えておきたい。

伊藤亮太(いとう・りょうた)
学生の間にCFP資格、DCアドバイザー資格取得。その後、証券会社の営業・経営企画部門、社長秘書等(その間に投資信託や株式の販売、セミナー企画、FX事業の立ち上げ、投資顧問会社の設立など)を行う。また、投資銀行業務にも携わる。2007年11月 スキラージャパン株式会社設立。取締役に就任。東洋大学経営学部非常勤講師、大手前大学通信教育部非常勤講師、千葉科学大学危機管理学部非常勤講師、ファイナンシャルプランナーとして活動中。