■「子どもの人権に最大限の配慮をするのが現在のテレビ番組では鉄則」
鎮目氏はそのように今回の『ナイトスクープ』の放送内容を分析した上で、「ですが、テレビマンとして気になるところはありました」と言い、こう続ける。
「1つは、取材をする前に、ちゃんとヤングケアラーなのか、それとも、“ちょっと大変な家庭レベル”なのかを番組側がきちんと調べたのか、ですね。問題がないと判断したからこそ放送したのでしょうが、そこはハッキリさせたいところですね。
もし、事前の調査の時点で、本当にいつも家に子どもしかいないような家庭だと分かったとすれば、それは撮影どころではなく、通報案件になってくるわけですよね。ですが、番組として問題ないと判断したから放送したと見られますが……」
鎮目氏は、問題となっている母親はこれまでインスタグラムで家族の話も発信していることも指摘し、
「SNSを確認したり、事前に親から話を聞いたりしていれば、その人たちに問題があるかどうかはある程度分かりますよね。それでマズいとなれば、『ナイトスクープ』では撮影せずに通報する流れになった可能性もある。
それで問題がなかったはずなのに、あのような形で放送したことにも疑問が残ります」
『ナイトスクープ』を見た視聴者からは、“子どもだけが家にいる”という状況が問題視もされたが、あれがせいややスタッフ――信頼できる大人がいた撮影当日だけの話なのか、日常的にそうなのかでは、話が変わってくるだろう。
「仮に演出だったとすれば、番組側が視聴者に向けて“いつもは親がいますが――”という説明を、ちゃんとするべきだったと思います。番組側が説明不足だったから、結果的に最後の“オチ”も笑い話にならなかったのかなと」
問題となっているVTRのラスト、「米炊いて7合!」という母親の言葉には“番組側が問題提起として入れたのでは”という意見もあるが、実際のところは笑えるオチのつもりだったのでは――と、鎮目氏は指摘する。
「問題提起のためにあえて残した――その可能性も否定はしませんが、そもそも『ナイトスクープ』は、視聴者がくだらなくてどうでもいい、馬鹿馬鹿しい依頼をしてもいい番組ですよね。笑いを大切にする番組ですし、その意味でも、オチをつけて笑える感じで終わらせたかったのかもしれません。
ただ、先に述べたように、子どもの人権に最大限の配慮をするのが現在のテレビ番組では鉄則ですし、そうした部分で、視聴者に“母親に問題があるのでは”と思わせる演出を入れることは、避けるべきだったかと思います。
結果として視聴者に“この先、長男は大丈夫なのか”と不安にさせてしまったし、母親のSNSも炎上させてしまったわけで……。これに関しては、演出の失敗と言えるところかもしれませんね」
同騒動は、地元の衆議院議員の小林史明氏がXで《行政機関と共有し、教育委員会含め丁寧に対応していただくことになりました》とコメントするなど、大きな事態になってしまっている――。
鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)