■「現在のテレビは“おじさん”がメインターゲット」――元キー局Pの分析

 民放ドラマでは他の追随を許さないほどの高数字を叩き出しているTBS日曜劇場。その“強み”とは――元テレビ朝日プロデューサーで、多くの番組に携わってきた鎮目博道氏に話を聞いた。

「やはり日曜の夜というのは、男性を中心にサラリーマンがゆっくりテレビを見ることができる唯一の時間帯ですよね。その枠を確保しているというのは強みです。さらに、現在のテレビでは“おじさん”がメインターゲットとなりつつあるところもあり、だからこそ、同層を押さえられている日曜劇場は強いのかな、と感じます」(鎮目、以下同)

 現在は海外の配信ドラマが流行っていることから、ドラマ好きでも若年層は地上波テレビから離れていっているとも言われているが――、

「シニア世代ではBSドラマ、ネット配信されている中国ドラマなどが流行っていて、この層も地上波ドラマを見なくなりつつあるんです。そのため、若者とシニアの中間である、言ってしまえば“おじさん”がテレビのメインターゲット層になりつつある。そういう意味でも、そこが視聴層の日曜劇場は強いということですね」

 日曜劇場は『半沢直樹』など“企業もの”のイメージもあるが、鎮目氏は『VIVANT』や『ラストマン』など最近のヒット作を挙げ、方向性の変化を指摘する。

「ターゲット層こそブレていませんが、ジャンルがアクションやサスペンスにシフトしつつある感じがします。過去作品で実績があるのに……そこで、新しい企画をチャレンジできているのは凄いですよね」

 日曜劇場では、今夏からの放送と見られる『VIVANT』の続編で、TBSドラマとして初めて地上波本編にGoogleのメディア生成AI「Veo 3」による生成AI映像を導入すると発表するなど、最新技術を用いたチャレンジにも意欲的だ。

「現在放送中の『リブート』も斬新な設定ながらよく作り込まれていますし、カット割りや演出も海外の要素も取り入れている感じ。韓国ドラマみたいで、テンポも映像も良い。脚本も次々と謎が積み重なっていく感じですから、1度見てしまうと最後まで見たくなりますよね。

 現在の中年サラリーマンは、子どもの頃に『西部警察』(テレビ朝日系)とか『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)といった派手な刑事ドラマを見ていた世代。ああいう“動き”のある作品は予算不足になると絵が弱くなりがちですが、日曜劇場は大きな予算があるようですからクオリティが確保されていると思います」

■日本一歴史の古いドラマ枠でもある

 鎮目氏は日曜劇場の強みの1つとして、「『ザ・ロイヤルファミリー』(25年10月期)もそうでしたが、映像が美しいですよね」と指摘。

 妻夫木聡(45)主演の『ザ・ロイヤルファミリー』は競馬がテーマの作品。本物の競走馬や現役騎手を出演させたり、北海道日高の雄大な牧場地帯でロケが行なわれるなど、人間ドラマ以外の映像にも力を入れていた作品である。

「地上波ドラマでは、NHKの大河ドラマと日曜劇場だけは制作費のレベル、豪華さが違いますね。映画クオリティの画質やハイレベルな脚本など、他のドラマ枠と一線を画すゴージャスさがあります。現在は潤沢な予算で撮られた海外ドラマが多く配信されている時代ですが、それと比べても遜色ないのではないでしょうか」

 さらに鎮目氏は「私はテレ朝時代に同じ部署にテレ朝の第1期生がいたんですが……」と言い、「実は『日曜劇場』は、テレ朝の開局1期生が研修先にしていたドラマ枠でもあるんです」と話す。

 TBSで日曜劇場(当時は『東芝日曜劇場』)が始まったのは1956年12月。同枠はNHKも含めた現存するすべてのドラマ枠の中で最も長寿で、唯一50年代から続いているドラマ枠である(※朝ドラと大河は60年代スタート)。

 そしてテレ朝1期生は1959年に本放送を開始する前の準備期間中、日曜劇場の現場に派遣され、そこでドラマの作り方を勉強していたという。

「つまり、テレビ朝日の開局前からある古い歴史のある枠。ですので、多くの国民に視聴習慣がついているとも言えそうです。それも同枠の作品が人気である要因の1つではないでしょうか」

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 最古にして最強のドラマ枠であるTBS日曜劇場。今夏からは第1弾が空前のヒット作となった『VIVANT』が2クール放送されるとも報じられており、今年も同枠が大きな話題を生み出しそうだ。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)