2月6日から、イタリアでミラノ・コルティナ冬季オリンピックが開催される。

 NHKアナウンサーとして多くのスポーツ実況を担当してきた刈屋富士雄氏は、2006年のトリノ五輪における荒川静香(44)の金メダル奪取を「あれこそ究極の逆転劇だった」と振り返る。

「彼女は高校生の頃に長野五輪に出場したんですが、実力を発揮できないまま終わった。そこからフィギュア界は安藤美姫らの次世代へシフトしていきました。

 厳しい見方をすれば、荒川選手は一度“路線から外れた”ように映りました」

 だが、荒川は腐らなかった。早稲田大学に進学すると、アルバイトをしつつ、新横浜スケートセンターに通って地道に技術を磨いた。

 そして迎えたトリノ五輪。

「下馬評ではコーエンとスルツカヤの2人が有力で、荒川は“実力が出せれば銅メダル”という評価でした」(フィギュアライター)

 だが、前出の刈屋氏は、フリー当日の朝、「荒川さんが勝つ」と確信したという。

「前日の(ショートの)スコア表を見たら、彼女のスケーティング技術はジャッジから高評価を得ていた。これでミスさえなければ勝てる、と思いました」(前同)

 刈屋氏といえば、「オリンピックの女神は荒川静香にキスをしました!」という名実況で知られる。

「演技後、選手が採点発表を待つ場所は通称『キス・アンド・クライ』と呼ばれます。口づけと涙……喜びと悲しみが交錯する場所、というニュアンスを凝縮したのが、あのフレーズです。

 五輪の女子フィギュアは、実績通りにいきません。4年に1回、その日一番、輝いた選手に勝利の女神がほほ笑むスポーツなんです。だから“女神がキスをした”というフレーズ自体は、自然と出てきましたね」(同)