曲がる、落ちる、伸びる、滑る…打者を翻弄した、ホームベース上の“魔術”の秘密を、自身も使い手だった元投手や対峙した元バッターたちが語り尽くす今回の企画。最終回は、シンカー・シュート編をお届けする。

 世間一般には、山田久志や潮崎哲也ら、サブマリン&サイドハンドの決め球という印象が強いシンカー。だが、MLBで言うそれは、日本ではツーシームと呼称されることが多い球だ。

 現役投手では、侍ジャパンにも選出された左腕、オリックスの曽谷龍平(25)が、空振りも取れる変化球として効果的に使っている。

 プロ野球のデータ解析を手がけるジャパンベースボールデータの宮下博志氏は、曽谷をこう評する。

「昨季は全投球の約2割がシンカーと年々、割合は増えている。スライダーとの組み合わせでうまく使えている印象です」

 左投手のシンカーといえば、50歳まで現役を続けた山本昌のスクリュー。

 現役最年長左腕の石川雅規(46)も、この球を武器に、今季も25年連続勝利の記録更新に挑戦する。

 同学年で、阪神時代にノーヒットノーランを達成した井川慶氏が言う。

「打席では“相手から、どう見えるのか”を、自分の投球に置き換えて見ていることが多かった。同じ左の石川のスクリューは、その曲がり方などをよく参考にしていました」

 他方、シンカーやツーシームといった呼称に押されて、近年はあまり聞かなくなったのがシュートだ。

「シュートは縫い目に人差し指と中指をかけて投げますが、ツーシームも握りは同じ。昔は、ここに腕を捻る動作を加える投手もいて、それがケガにつながると考えられていました」(スポーツ紙デスク)

 往年の名投手では、“巨人キラー”で名を馳せた平松政次の代名詞“カミソリシュート”が思い浮かぶ。

「当たると思って避けようとしたら、外角いっぱいにストライク。あれは今でも印象に残っています」

 平松のシュートを“トラウマ級”だと評するのは、現役時代1683試合に出場した田尾安志氏だ。左腕の使うシュートを、とりわけ苦手としていたという同氏は、こう続けた。

「一番嫌だったのは、球も速かった大野豊。同じ左でも、シュートのない川口和久はまだ対処のしようがありましたけどね。大野との対戦では、いつも初球に投げてくることが多かったスライダーを狙ってました」

 また、平松の系譜を継ぐ横浜には、盛田幸妃らシュート投手が多かった。

 高速スライダーを武器に、後にメジャーでもクローザーとして大活躍した斎藤隆も、その一人。実際に対戦した元捕手の野口寿浩氏が言う。

「平松さんのカミソリシュートって、こんな感じだったのかなと思えるぐらいスピードが速くて、よく曲がる。あれは嫌でしたね。

 ヤクルトで一緒だった西村龍次さんも抜群でした。フルカウントからでも平気で投げて抑えていた。鋭角にギュッと曲がる、いいシュートでした」