■本物のチェンジアップの凄み
それ以外の球種では、どんな“魔球”があるか。
古くは、稲尾和久直伝のパームボールで79年の新人王に輝いた藤沢公也らの変わり種もいたが……。
自身も屈指の使い手の一人だった前出の井川氏は、帰国後のオリックス時代に同僚だった金子千尋のチェンジアップを、こう評する。
「彼の場合はすべての球種で腕の振りが一緒なので、チェンジアップがより効果的。奥行きのボールとして右にも左にも使え、しっかり空振りを取れていた。あれこそ本物と感じました」
現役投手では、日本ハム入りの有原航平(33)や西武・隅田知一郎(26)。前者はタイミングを外す球、後者はフォーク的に使える決め球として武器にする。
「意に反して泳がされるのが打者として最もダメ。その意味で、腕の振りにつられてバットが出てしまう、阿波野秀幸のチェンジアップも嫌でした」(前出の田尾氏)
前出のスポーツ紙デスクは、オープン戦が始まった今のタイミングを見逃すなとアドバイスする。
「この時期、投手は習得中の変化球を試投したりもする。新たに誕生する魔球を見るチャンスですからね」
投手たちが努力で会得した、種も仕掛けもある魔法を今季も目撃したい。
【前編】往年の名投手は165キロ出ていた!? プロ野球「この魔球が凄い!!」2026【ストレート・カーブ編】では、かの張本勲が「165キロは出ていた」とも証言する“400勝投手”金田正一の凄さや現在、球界No1投手とも評される伊藤大海のストレートだけが持つ特徴を元阪神の井川慶氏や楽天で監督も務めた田尾安志氏が解説する。
田尾安志(たお・やすし)
1954年、大阪府生まれ。高校時代は投手として注目を集め、同志社大では投打二刀流で活躍。75年、ドラフト1位で中日に入団。16年間で1683試合出場し、通算打率.288(5414打数1560安打)、149本塁打、574打点を記録した。
井川慶(いがわ・けい)
1979年、茨城県生まれ。水戸商業高校から98年にドラフト2位で阪神タイガース入団し、2003年には20勝を挙げてチームのリーグ優勝に大きく貢献。最多勝・最優秀防御率・最高勝率に加え、MVP、沢村賞、ベストナイン、最優秀投手と主要タイトルを総なめにし、04年10月4日の広島戦では史上71人目となるノーヒットノーランを達成。NPB通算219試合に登板し、93勝72敗1S、防御率3.21の成績を残し、07年にはMLBニューヨーク・ヤンキースへ移籍。帰国後はオリックス・バファローズに加わり、再びNPBのマウンドで活躍した。
野口寿浩(のぐち・としひろ)
1971年生まれ、千葉県出身。習志野高時代に高校通算11本塁打を記録し、89年オフにドラフト外でヤクルトスワローズに入団。98年に日本ハムファイターズへ交換トレードで移籍し、監督推薦でオールスターに初選出。99年には正捕手として130試合に出場。翌年には最高打率.298を残し、得点圏打率もリーグトップで、「ビッグバン打線の恐怖の8番」と恐れられた。捕手としても盗塁阻止率.423を記録し、二度目のオールスターゲーム出場。03年にはトレードで阪神タイガースに移籍し、翌年10月4日の広島戦では井川慶とバッテリーを組んでノーヒットノーランを達成した。08年には再取得したFA権を行使し、横浜ベイスターズへ移籍。引退後は、17年にヤクルト2軍バッテリーコーチ、18年は1軍バッテリーコーチを務めた。