■勝手にSNSに投稿する人も

 昭和12年創業の東京・大田区の老舗銭湯『蒲田温泉』。黒湯の熱さで知られるこの名湯でも、ここ数年、客層の変化とともに思わぬトラブルが浮上している。

「昔は周りの大人が叱ってくれました。でも今はトラブルにつながることもある。常連さんには直接注意せず、スタッフに伝えてもらうようお願いしています。今までの常識が通用しなくなっているんです。マナー違反はほぼ毎日のようにあって、常連さんが“今日は大丈夫だったよ”と教えてくれるくらい。何もない日のほうが珍しいんです」

 そう打ち明けるのは、同店の女将・島由紀子氏だ。そんな蒲田温泉の蒲田温泉の売りは、45度を超える高温の温泉(黒湯)だが、

「浴槽に勝手に水を入れて温度を下げてしまう人がいるんです。ひどいと37度くらいになることもあります。従業員が注意すると、逆ギレされるケースもあります」(前同)

 近年、とりわけ深刻なのがスマートフォン問題だ。

「脱衣場や浴室を撮影し、勝手にSNSに投稿する人もいます。他の利用者の裸が写り込んでしまうこともあるんです」(同)

 張り紙で持ち込み禁止を告知しても、「どこに書いてあるの?」と詰め寄られることもあるという。

 さらに驚いたことに、

「女性風呂では、過去にサウナでアロマ塩や牛乳を使うお客さんがいました」(同)

 これなどは、スーパー銭湯と混同しているようだ。

 とはいえ、決して新しい客が歓迎されていないわけではない。

「SNSで知って来てくださる方も多く、新しい方が来てくださるのは本当に嬉しいんです」(同)

 実際に蒲田温泉は、2階の広間で食事を提供したり、手ぬぐいやキーホルダーなど、さまざまなオリジナルグッズを制作したりするなど、新しい客層の開拓に努力を惜しまない。

 それが功を奏したのか、芸能人にもファンが多く、女優の二階堂ふみが2019年に町中を歩く姿を週刊誌に激写された際に蒲田温泉のTシャツを着ていたことから、銭湯マニアたちが色めきだった。

 ちなみにこのTシャツ、全7色で展開されており、二階堂ふみが着ていたのは水色の商品。2023年には、『日向坂46』の絶対的エース・小坂菜緒が雑誌『BUBUKA』の撮影でワインレッドの商品を着用したところ、「ひと月で300枚売れました(笑)」(同)とか。

 最後に、中井氏がこう語る。

「銭湯は楽しい施設ですが、他の人も利用する公共の施設であることを心にとめて利用してもらいたいです。とはいえ、特別な心構えは不要。常識を持って、他の客の迷惑にならないよう心を配るだけでオーケーです」

 さあ、あなたも今日は銭湯に行ってみては?

中井仲蔵(なかい なかぞう)
1968年、富山赤十字病院生まれ。普段は某中小企業に務めつつ、こっそり雑誌やウエブ媒体に原稿を書くコラムニスト。東京で営業中の銭湯419軒すべてに入湯した銭湯マニアで、他にも歌舞伎や文楽(人形浄瑠璃)などの古典芸能から、アメリカン・コミックス、映画まで、コラムのジャンルは多岐にわたる。