■ 関係性に言葉を与えないことで、「りくりゅう」が得られる“メリット”も

 ただし、関係性を明言しないことで、「りくりゅう」側のメリットもある。前出の前田医師が話す。

「関係に名前がつくと、そこに期待や役割が生まれます。恋人ならこうあるべき、といった暗黙の前提です。名前を持たない関係は、そうした役割から少し距離をとりやすくなります。その時々に必要な形で関わり続けられる、という余地が残るとも言えます。

 実際、日常の役割や評価から少し離れていられる関係が、その人の安定や挑戦を支えていることもあります。定義されないことが、結果として柔軟さを保つ助けになる場合もあると思います」(前田医師)

 関係性を明示しないことで世間は“より気になる”が、りくりゅうの2人にとっては“恋人の役割”を与えられず、雑音なく競技に集中しやすいといったところだろうか。

 では、逆に気になる関係性がハッキリすると、世間は興味を失ってしまうものかというと──前田医師は、「完全に興味を失うわけではないと思います」とした上で、「ただ、関心の向きは少し変わるように感じます」と続ける。

「曖昧な段階では“知りたい”という気持ちが強く働きますが、関係が明確になると、その問いはいったん落ち着きます。すると関心は、“これからどう続いていくのか”といった別の方向へ移っていきます。意味づけが定まり安心が生まれる一方で、その関係のこれからの時間に目が向くようになるのかもしれません」(前同)

 2人の関係性は「ご想像におまかせ」。そんな「りくりゅう」の活躍を、今後も見守っていきたい。


 

前田 佳宏 院長
和クリニック
精神科/心療内科医
精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者(サンマーク出版)
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。

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