魂の伝道師、ラモス瑠偉のコラム。

 今回は、連載初回でも触れた、「応援」が大きな力につながることについて綴ります。

 私が実際に「応援の力」を強く感じた出来事が、1992年10月のアジアカップ初優勝です。当時の日本代表はW杯に出場したことがなく、アジアでも望むような結果を残すことができていませんでした。

 しかし、同大会直前の8月に中国で開催されたダイナスティカップで、日本代表は初優勝。東アジア4か国で争ったこの大会は完全アウェイの厳しい戦いであったため、チーム内では期待感が高まりました。

 そして10月に広島で迎えたアジアカップでしたが、グループリーグの最初の2試合は観客や報道陣が少なく、期待感の小ささを感じたことを覚えています。

 しかしながら、2分けで迎えた同第3戦イラン戦で、状況は変わりました。イランは引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まり、日本は勝利しなければ敗退となる苦しい状況でしたが、この試合に、3万7千人もの観客が参集しました。

 その応援の力もあり、イランに勝利。決勝Tに勝ち上がると、熱い気持ちを持ったサポーターが選手ホテルに多数、駆け付けました。外に出られないほどの大勢の人で、嬉しさを感じた瞬間となりました。そして、その熱気と応援が、選手の気持ちとプライドを熱く盛り上げたのです。

 準決勝・中国戦は日本に退場者が出る苦しい展開でしたが、劇的な勝利を収めることができました。それも、試合前からの雰囲気作りがあったためです。選手とサポーター、メディアのすべてが一つになっていく様子を肌で感じました。

 その中で迎えた、サウジアラビアとの決勝戦。当日のスタンドは、6万人の大観衆で埋め尽くされ、歴史を変えようとするサポーターが作り出す独特の雰囲気がありました。中継カメラや報道陣の数も、期待の大きさを感じさせました。そして、それが原動力となり、日本が勝利。日本サッカー史に刻まれることになる、アジアカップ初優勝を成し遂げました。