■地味なのに感動する『ばけばけ』

 地味なのに、じんわり感動する第21週だった。なんの意味があるのかと思われていた、第20週の焼き網騒動エピソード。ここで描かれた「良い嘘」を、呪われたイセ(芋生)のエピソードにつなげた。そしてイセの恨めしい呪いを、松江でさんざん恨めしい目にあってきたトキが、“ただの呪われたがり”という自身の特性を使った「良い嘘」で収めてみせた。

 トキ(高石)の活躍に、《ヒロインが望んで呪いを受け入れる。楽しくてゾクゾクする。あなたの呪いは私が受け取ったからもう大丈夫と。ああおトキは紛れもないヒロインだよ》などと、ヒロインらしいという称賛の声も。確かに、自分の手でなにかをつかみ取る、朝ドラのヒロインらしいことをトキがしたのは、今回が初めてかもしれない。

 ドラマが始まって5か月。トキがヘブン(トミー・バストウ)の妻(THE GHOST WRITER'S WIFE)というヒロインに、やっとなったと言える。驚くほどのスローペースだが、ゆっくり寄り添うように、恨めしい世界が素晴らしいものに変わっていく。そして、その様子を見ていた者には、スローペースだからこその深い感動がある。見続けていて良かったと思った視聴者も多いだろう。

 次週からは、錦織(吉沢亮/32)に代わってリテラシーアシスタントとしてヘブンを支えつつ、トキの妊娠、出産のエピソードが展開されるのだろう。残すところ4週間(全25週)だが、トキとヘブンをめぐる素晴らしい世界をゆっくり楽しみたい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。