春――。新生活も始まりフレッシュな息吹が街なかに溢れるシーズンだ。その一方で、「サッサと会社を辞める若者」が取り沙汰されるのも風物詩である。厚生労働省によれば、2022年3月に卒業した新規学卒就職者で、就職後3年以内の離職率は33.8%とおよそ3人に1人が辞めている。ただし3年以内の離職は今に始まったことではない。統計を参照すると、この30年間、常に3割前後を推移。もっとも割合が高いのは04年で36.6%だった。

 そうしたなか、3月4日にXで話題となっていたのは、あるユーザーが投稿していた、職場を去る新卒社員に関する書き込み。《上司「1回逃げたやつはずっと逃げる」退職届を出した新卒に、上司が言ったひと言。 シーンとした社内。》から始まる投稿は話題を呼び、現在700万回以上の閲覧を記録している。

 嫌な職場から逃げるか耐えるかを巡ったこちらの議論――。堪え性がない、と言われがちな現代の若者だが、一体どのような原因で会社をやめるのか。「辞める若者」のトレンドについて、千葉商科大学准教授で働き方評論家の常見陽平氏に話を聞いた。

「そもそも論で、昔から若者は辞めるもの。3年以内の離職率も、もう30年ほど3割前後と概ね横ばいなんです。なぜ若者が辞めるかというと、“辞められる”からですよね。求人はあるし、次の職場が未経験でもまだ間に合うし、年齢を重ねれば重ねるほど未経験が厳しくなり、ライフイベントの関係で、現状の職を辞めるに辞められなくなるものです」(常見氏=以下同)

  では、「若者の価値観」についてはどうか。

「“最近の若者”はちょっとしたことで職場がキツいと言い堪え性がない、昔はもっと耐えたのに、という論が世間ではまことしやかにはびこりがちです。ただ、この若者の意識に答えを求めるのはやや危険です。

 若年層の転職をあおるような広告がテレビやタクシー、電車の中でもバンバン流れていて、選択肢がたくさん提示される。転職支援サービスも多様化が進んでいますし、進化しています。売り手市場で求人もたくさんあります」

 また、親世代であれば名が通った上場企業に長く勤務するのが正解だったが、この考えにも変化が起きているという。

「今の若者は大手企業でも、躊躇なく辞める。これにも転職市場の変化があり、以前は新卒一括採用の権化だった大手企業が中途採用に積極的だからです。メガバンクや総合商社でも、中途の比率をあげており、いまや半々くらいです。よく、新卒が辞めたとか逃げたとかいう話がSNSで話題になりますが、少数派の話がセンセーショナルに広まってしまっている側面が大きい。その意味では、SNS社会になり昔なら知らなかったような話が、過剰に飛び込んできている部分もあるでしょう」