■短距離型からマラソン型の将棋に
さらに、24年の失冠によって藤井聡太六冠攻略の機運が高まり、挑戦者たちの“包囲網”も敷かれ始めた。
「王将戦の挑戦者である永瀬拓矢九段(33)は、これまで何度も藤井さんと対戦してきた、いわばライバル。“鬼軍曹”と呼ばれるほどのストイックさで研究を重ね、藤井さんを猛追していますね」(前同)
一方、棋王戦の挑戦者の増田康宏八段(28)は、史上12人目の1000勝を達成した森下卓九段の弟子。
「増田八段も、とても才能がある棋士。今回の棋王戦を前に、“一発かませると思う”と、インタビューで語るなど、闘争心を前面に出すファイターです」(同)
こうした難敵を前に、藤井六冠は戦い方を模索しているのではないかと、本サイトの将棋解説を担当する前出の佐藤義則九段は指摘する。
「藤井さんがAI研究で先行していた頃は、序盤から終盤まで一気に突き放す、100メートル走のスプリンターのような将棋で勝っていました。しかし、研究の差が埋められつつある現在は、相手と駆け引きをしつつペースを作る、マラソン型の将棋に変えています」(同)
その変化が如実に表れたのが、2月21日の棋王戦第2局だったという。
「藤井さんが114手で勝ちましたが、72手目の3三桂や88手目の5五玉など、以前なら勝ちに行く場面で、あえて負けにくい手を選んでいた。この対局前、藤井さんは駒箱を前にじっと考え込み、ものすごい気迫だったそうです。ここは負けられないと、追い込まれていたんでしょう」(同)
藤井六冠はスランプを脱することができるのか。
「どんな大名人でも勝ち続けるのは不可能です。棋王戦は1勝1敗に持ち込みましたが、王将戦はもう1局も落とせない状況。3月の連戦をどう乗り切るのか、注目です」(同)
1強時代の終わりか、それとも復活の序章か。
佐藤義則(さとう・よしのり)
1949年2月17日生まれ。東京都出身。師匠は故・芹沢博文九段。64年6級、70年初段、98年八段。2014年6月18日に引退し、19年4月1日九段に昇段。本サイトの将棋解説も担当。