■不便さもまた、味
東京モンとして言わせてもらうとしたら、大衆酒場の聖地と呼ばれた葛飾・立石や俺が生まれた新宿にあるしょんべん横丁とか、そういう雑多な風景ってのは、「故郷の光景」だったりするんだ。「うさぎ追いしかの山、小鮒釣りしかの川」なんだよ。そこで働くおじさんやおばさん、ベロベロに酔っ払うおじさんたちを見て育ってきたわけ。
飲んでてトイレに行きたくなったら、「ちょっと鍵借りるよ」って鍵借りて、横丁の共同トイレに行ってたりしてさ。そういった不便さもまた、味なんだ。そんな日常も、あと5年もしたら、なくなっちゃうね。
NHKの『世界ふれあい街歩き』なんかを見てるとイタリアやスペインはバルがあって、しっかり昔ながらの街並みを残してる。
日本でも残せないものか。狭小で年季が入った建物、煙モクモクの炭焼きの店など、どうにか消防法や耐震性をクリアして、昭和風情を残したお店が、これからも商売を続けていけるような特区を制定してほしい。
実は、そんなこと言ってる俺もマンションに住んでる。近所に住む古くからの住民に、「昔、ここは雑木林で狸が出たんだ。豊かな自然が残ってたのにねぇ」なんて言われたら、ぐぅの音も出ない。こうなったら、長屋に住むしかないか。
玉ちゃん(たまちゃん)
1967年生まれ。東京都新宿区出身。86年にビートたけしに弟子入りし、翌年、水道橋博士と浅草キッドを結成。一般社団法人全日本スナック連盟会長。