■フキハラが起きやすい職場の特徴を専門家が解説

専門家の解説

※ ※

「フキハラ」について、千葉商科大学基盤教育機構准教授で働き方評論家の常見陽平氏は「ここ1、2年で注目されるようになった概念」だとしたうえで、フキハラが起こりやすい職場には特徴があると言います。

「言葉の暴力、しかも直接、誰かを攻撃するわけでもなく、社内で人が不愉快になる言葉を連呼することも立派なハラスメントということが、徐々に浸透してきています。特徴は、“精神的にくる”ものだということ」(常見氏・以下同)

 常見氏が上げるハラスメント行為には頻繁にため息をつき、部下にプレッシャーを与える行為や業界トップ企業の成功事例を自社との比較対象に並べ、自社の業績も同じような手法で伸ばすように部下に一方的に負担を強いる振る舞いも含まれる場合があるそうです。

「なかでも上下が明確な関係性では、被害者がハラスメントと思わないという問題があります。周囲もある種“当たり前”だと受け止めてしまい、何も思わない、仕方ないなどと思ってしまうのです」

 しかし、厚生労働省のハラスメントの定義によれば、

・優越的な関係を背景としている(上下関係がある)
・業務上必要かつ相当な範囲を超えている(仕事と関係ない人格否定などの言動)
・労働者の就業環境が害される

 とあります。つまりは、被害者や周囲が加害者の振る舞いを当たり前だと受け止めていたとしても、ケースによってはハラスメントとして認定される場合もあるのです。

「管理職による職場でのフキハラに気づいている人がいたとしてもそれを言いにくい雰囲気がまん延している。働く人のストレスがじわじわ溜まってきて、結果的に社員が辞めてしまうことも珍しくはありません」

 一方で、どこからがフキハラになるかという“境界線”は難しい。常見氏は「何気なくついてしまったため息がフキハラになるかなど、気にしすぎてもよくない」としたうえで、「もっとも根深いのは加害者が無自覚なケース」だと言う。

「加害者はある意味“被害者”でもあるんですよね。その人に仕事が集中していないか、メンタルを病む事情が何かないか、あるいは体調不良など、不機嫌になる背景が潜んでいる場合もあるかもしれません。職場での不機嫌な言動は、何らかのシグナルかもしれないということです。大事なのは、日頃から互いに意見を言いやすい職場をつくっておくこと。管理職のことや働き方も、必ず誰かが見守っている組織体制が求められます」

 今回紹介したケースでも新規プロジェクトの立ち上げを責任者として行っている谷口さんに大きな負担がかかっているのは明らかだ。谷口さんも自身の業務上の負担を減らすべく、周囲へと業務量の改善を求めるなどの行動を取るべきです。

 職場の雰囲気は、離職率にも直結します。風通しのよい関係性こそが、安心して働ける職場といえでしょう。

常見陽平
1974年生まれ.北海道札幌市出身.一橋大学商学部卒.同大学大学院社会学研究科修士課程修了.リクルート,バンダイ,ベンチャー企業,フリーランス活動を経て、現在、千葉商科大学基盤教育機構准教授,評論家
主著─『日本の就活』(岩波新書)『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社新書)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版)『50代上等!──理不尽なことは「週刊少年ジャンプ」から学んだ』(平凡社新書)など