■「スポーツ中継には配信のほうが向いている」元キー局Pが解説

 WBCのNetflix独占配信、有料配信サービスと地上波の今後について元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏はこう解説する。

「今回のWBCで、スポーツ中継には配信のほうが向いていることがはっきりしたのではないでしょうか。民放だと放送時間の関係で試合が変な終わり方になることもありますからね。

 それに地上波で放送する場合、スポーツに興味ない人にも見てもらおうとして煽ったり、タレントを使ったりしますが、生粋の野球好きからすると若干ウザいとも思える演出になりがち。枠も限られてくるので放送があるのは日本戦だけになるということもありますが、野球好きなら日本戦以外にも面白い試合が見たいはずです。

 それが配信であれば、余計な盛り上げもせず、球場で見るのに近い状態で試合に集中できる。今回のWBCで“こっちのほうがいいじゃん”と多くの人が気づき始めたと言えそうです」(以下、鎮目氏)

 WBCの試合自体はNetfilxの独占配信だが、その中継制作を請け負っているのが日本テレビだ。

「巨人の中継で培った経験と技術があるわけですからね。ある意味で最強の制作会社が作っているんです。今後、大きなスポーツイベントは中継のノウハウを持っているテレビ局が配信サービスのための制作を請け負うことになる可能性もある。ただ、よく考えれば理想的な座組でもありますし、今回のWBCは今後のスポーツイベントのモデルケースになったのではないでしょうか。

 一方でお金を払わないと楽しめないという寂しさもあります。ただ、そこは月額500円をどう考えるかということになるでしょう。配信サービスにはさまざまなコンテンツがありますし、NHKより安い。コスパ的にはいいですよね。

“タダほど高いものはない”という言葉がありますが、タダ(地上波)だとちょっと不便なところがあり、放送時間などを我慢して見る。一方で配信サービスはお金を払うことで快適に楽しめる、そんな時代になりつつありますよね」

 テレビ局の今後については、

「テレビ局側も世界配信で儲けるようなビジネスを中核に据えることになってきています。ドラマなどは配信が本番で、地上波は配信での展開を盛り上げるための長い予告編を見てもらう場になっていくのかもしれません。バラエティもそういう兆しがあり、面白いバラエティは配信に軸足を置くようになりつつあります。

 そんななかにあって地上波に残される主戦場はニュースになりそうです。速報的に伝えることができる強みがありますからね。ただ、ビジネスニュースや国際ニュースなどの専門性の高いニュースは配信でも良さそうです」

 今回のWBCをきっかけに、国際的なスポーツイベントの中継は配信サービスで観戦することがスタンダードになっていくのだろうか――。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)