医療の世界は日進月歩。昨日まで正しかったことが否定される、そんな逆転現象も珍しくない。肉より魚、1日1万歩――。疑いもなく信じてきた昭和の常識が、ときには健康を損ない、命の危険を招くことさえある。「昭和の常識」は「令和の非常識」。人生100年時代を健やかに生き抜くための“令和の新常識”を、4つのテーマに分けて徹底調査した。

 健康長寿の第一歩は運動から。その象徴として広まったのが、「1日1万歩を目指す」という習慣だ。だが、その常識に新潟大学名誉教授の岡田正彦医師は警鐘を鳴らす。

「万歩計が発売されたのは、1965年。東京五輪による運動ブームに乗り、“1日1万歩”というキャッチコピーとともに広まった。しかし、当時、1万歩が健康によいという科学的根拠は、実はなかったんです」

 宣伝文句が、そのまま定着したわけだ。ウォーキング自体の健康効果は高いので、令和の今は歩数ではなく歩行速度と脈拍を意識すべきだと、岡田氏は続ける。

「時速6.5キロ程度のやや速歩きで、脈拍が少し上がる運動が健康増進につながるという研究結果があります。なので、万歩計ではなく、脈拍を測れるスマートウォッチをつけてほしい。脈拍の目安は、“165マイナス年齢”です。65歳なら、1分間100回程度を目指しましょう」(前同)

 ウォーキングをはじめとする有酸素運動はダイエットにも有効だが、そこでよく耳にするのが、20分以上続けなければ脂肪は燃えないという説。『長生きするのはどっち?』(あさ出版)の著者で、総合内科専門医の秋津壽男氏は、こう語る。

「有酸素運動では、脂肪だけでなく、体内に蓄えられた糖質や肝臓のグリコーゲンもエネルギーとして消費されます。時間経過とともに脂肪の利用が高まるのは事実ですが、20分以上続ければよいと、単純に言い切れるものではありません」

 では、どうすればよいのか?

「1回5〜10分の軽い有酸素運動を1日に数回に分けて行うことで脂肪が減ったという研究結果があります。実は、運動開始直後から糖質と脂肪は消費されている。

 長時間まとめて行うよりも、空き時間にこまめに動いて合計で1日20分以上を目指せばよいわけです」(スポーツトレーナー)

 大切なのは無理をしないこと。健康維持のためにはスポーツが一番という固定観念も改めよう。

「体を動かすと体内で活性酸素が発生し、それが細胞の老化を進めます。激しいスポーツは通常の10倍もの活性酸素が生じるともいわれ、逆に寿命を縮める可能性も」(前出の秋津氏)

 秋津氏は、自分が心地よいと感じる範囲で体を動かすのが基本だと語る。

「例えば、階段の上り下りは平地歩行の5倍の負荷がかかるので、足腰の筋力維持につながります。日常生活の中で体を動かす工夫をすれば、健康長寿につながります」(前同)