医療の世界は日進月歩。昨日まで正しかったことが否定される、そんな逆転現象も珍しくない。肉より魚、1日1万歩――。疑いもなく信じてきた昭和の常識が、ときには健康を損ない、命の危険を招くことさえある。「昭和の常識」は「令和の非常識」。人生100年時代を健やかに生き抜くための“令和の新常識”を、4つのテーマに分けて徹底調査した。

 体を作るのは日々の食べ物なので、食事にまつわる標語は数多い。昭和世代なら、「たまごは1日3個まで」と、耳にタコができるほど言われたはずだ。

 しかし、『長生きするのはどっち?』(あさ出版)の著者で、総合内科専門医の秋津壽男氏は次のように定義する。

「現在は何個、食べてもよいといわれています。実は、食事で摂取するコレステロールが影響を及ぼすのは、血中コレステロール値の約2割。食べる量を減らしたところで微々たるものです。卵は栄養バランスがよい完全食なので、積極的に食べましょう」

 また、「朝の果物は金」という格言もあるが、

「果物だけを食べると、栄養が偏って血糖値を急激に上げるおそれがあるので、かえって逆効果です。健康面を考えるなら、一汁三菜の伝統的な定食スタイルが一番。そこへ果物を足すのがよい」(前同)

 ちなみに、和食はヘルシーとよくいわれるが、秋津氏によれば、「糖質と塩分に偏りがちなので、意識的に野菜を増やす必要がある」とのこと。イメージに安心せず、栄養バランスを冷静に見極めてほしい。

 同じく、「疲れたときは甘いもの」というイメージを持つ人も多いだろう。

「肉体労働で空腹のときは確かに有効です。糖分が体のエネルギー源になります。しかし、デスクワークなど、体を動かさない状態での疲労には逆効果。甘いものをとると血糖値が乱れ、脳の働きが低下し、眠気や倦怠感を招きます」(同)

 そこでオススメなのが、チーズやヨーグルトだ。

「乳製品は血糖値の上昇が緩やかで、アルギニンやトリプトファンなど、体の回復や神経の働きに関わる成分も含んでいて、ダブルで効果的。サッと補給したいときは牛乳や豆乳を飲むのも手です」(管理栄養士)

 他方で、左党にとっての免罪符とも言える休肝日も、実は、誤った認識だという。

「肝臓は、食事のときも働いているので完全に休ませることは不可能。大切なのは飲酒の間隔ではなく摂取量です。ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、ワイングラスなら1.5杯程度を1日の目安にすれば、健康への影響が少ないとされています」(秋津氏)

 近年流行した炭水化物抜きダイエットも「逆効果になる恐れもある」と指摘するのは、新潟大学名誉教授の岡田正彦医師だ。

「炭水化物、つまり糖質は太る原因と思われがちですが、実際はその逆で、脂肪を燃焼させるために欠かせないエネルギー源です。糖質を控えると脂肪がうまく燃えず、太りやすくなります」

 健康のためには正しい知識が不可欠。摂生をして体を壊しては本末転倒なのだ。

「50~60代に限れば、BMIを過度に気にする必要はありません。無理に痩せるより、やや太めのほうが筋肉を維持しやすいんです。

 また、60歳以上は、肉より魚という粗食志向を見直すべき。タンパク質が不足すると筋肉が衰え、“フレイル(寝たきり状態)”に陥りますし、高齢者は鉄分が不足しやすいので、貧血の予防のために週2回は赤身肉を食べましょう」(前出の秋津氏)