■最初からジェシーを愛でるためのドラマだった

 また、脱獄と並ぶもう一つの柱が、こずえ(篠原)の怜治(ジェシー)に対する感情の変化なのだが、これがしっくりこない。怜治はトラブルがあるたび、こずえを助けていたが、その程度では“実はいいやつ”以上でも以下でもない印象だ。こずえが脱獄に協力する動機としては、どうも弱い。そんな拘置所内のエピソードを延々と描くより、こずえの親子関係や過去の恋愛関係などのバックグラウンドをちゃんと描いたほうが、説得力が出たのではないだろうか。

 実際の内容はシンプルで、拘置所内でのドタバタした騒動に時間を費やしすぎたこともあって、ドラマ全体の内容が薄くなっている。見どころといったら、ジェシーのアクションシーンや肌を露出するサービスショット。それに、こずえに見せる妖艶な表情くらい。ジェシーファンのために作られたドラマと言ってもいいだろう。

 しかし、それでいいのだ。そもそも今期は、冬季五輪の中継番組があったため、ドラマは全体的に低調だ。どうやっても勝てない相手なら、下手に抗わない方がいいと、制作側が考えても不思議ではない。実際、今期は『冬のなんかね、春のなんかさ』(同局系)のような実験的なドラマが多いが、それも数字度外視で制作に臨めたからだろう。

 SixTONESの冠バラエティ『Golden SixTONES』(同局系)は、コア視聴率(13~49歳の個人視聴率)が同時間帯トップになるなど好調で、いまやSixTONESは日本テレビにとって大事な存在。そのメンバーであるジェシーのファンへのサービスだと考えるのなら、いくら数字が低くても問題はない。ある意味で将来に向けての投資。目の前の数字より、実をとったのが『パンチドランク・ウーマン』なのだろう。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。