コロナ禍で一気に市場が拡大したフードデリバリー業界に今、異変が起きている。
「調査会社サカーナ・ジャパンによると、2025年の国内デリバリー市場は前年比2.0%増、2019年比97.0%増の8240億円に達する見込みです」(経済ジャーナリスト)
数字だけを見れば巨大市場だが、その成長には陰りも見え始めている。経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏は、フードデリバリー市場は転換期を迎えたと見る。
「国内におけるフードデリバリーサービスは2017年に出前館が本腰を入れ始めたのがスタートです。その翌年にはUber Eatsが本格的に全国展開を開始。コロナ禍を機に外出自粛が広まると、一気に需要が増えました。ただ、その特需が終わった今、この先も同じ勢いで成長を続けるとは限りません」
事実、2026年3月4日には北欧発のフードデリバリーサービスWoltが日本でのサービス展開を終えている。
「Woltは雪国で培った配送ノウハウを武器に、北海道など降雪地帯でのサービス展開に力を入れてきました。ですが、日本は東京を中心とした大都市圏と地方との経済格差が大きい国です」(前出の経済ジャーナリスト)
現に東京都の最低賃金が1226円(2026年3月11日時点・以下同)なのに対し、北海道の最低賃金は1075円。通常の商品代金に加えてサービス料や配送料などが加算され高価になりがちなフードデリバリーサービスの需要が、経済力の低い地方ほど低下するのは明らかだ。
「地方では店も客も広く散らばり、注文もまとまりにくい。フードデリバリーサービスへの需要が増えているとはいえ、Woltが掲げた地方重視の戦略では勝ち切れなかったのが実情でしょう」(前同)
そんななか、市場の売上の多くを独占するのはUber Eatsだ。
「Uberは09年に米サンフランシスコで創業した配車プラットフォーム企業です。24年に株式会社S.E.ネットワークが国内の20~60代の男女600人以上を対象に、“フードデリバリーの利用状況”に関する調査を行ったところ、57.3%もの人が良く利用するサービスに“Uber Eats”の名前を上げました。2位の“出前館”の名前を上げた人の割合は36.4%ですから、20%以上その差があることになります」(流通アナリスト)
市場におけるUber Eats一強体制を支えているのは、シェア1位だからこそ生まれる好循環である。
「衣食住のように利用者が安心性を求めるサービスは、多くの人が利用しているものほどさらに使われます。消費者も“Uber Eatsなら、だいたいこのお店も入っているだろう”と思って使います。配達員も“Uber Eatsのほうが利用者も多くて稼ぎやすい”と考えて集まる。需要と供給が互いに刺激し合って増加していく形です」(前出の鈴木氏)