■血液の中にある水分や、各臓器にあるわずかな水分も削っていた? 極限状態を超えた吉沢亮の精神力

 格闘家の場合数キロ~10キロの減量をすることがあるが、前出の岡田氏は「格闘家の減量とはわけが違う」という。

「格闘家の場合は筋肉が大きくて、筋肉というのは水をかなり含むんです。つまり貯水してる水を吐き出せば結構抜けるんです。だから最終的には水抜きと言って、サウナやお風呂で大量に汗をかいて、水を一気に排水して計量に臨むわけですが、クリアしたらすぐ水を飲んで“給水”します。

 一方で吉沢さんはそこまでは筋肉があるわけではないと思うので、水抜きもなかなか大変だと思います。まず、ここまでの減量となるとトレーニングはむしろやれないと思います。トレーニングすると筋肉が残るためです。摂取カロリーを極限まで減らし、プロテインだけ飲むなどといった感じで、必要最低限の栄養素だけ取っていたのでは。そのうえで、おそらく血液の中にある水分や、各臓器にあるわずかな水分も削っていったんじゃないかなと。

 そうした極限の脱水状態で演技をするわけじゃないですか。すぐ給水できるわけでもない。となると、かなり過酷な時間が長くなり、肉体だけでなく、精神へのダメージも大きかったと予想されますよね」(岡田氏=以下同)

 精神面への影響とはいったいどんなものなのだろうか。

「栄養素や水分があってこそ神経の活動は正常化します。脱水すると呂律が回らなくなったり、そもそも声が出なくなったり、ぼーっとしたり、あるいは全身が鉛のように重くなったりするんです。また栄養失調に近く、免疫システムも正常であったとは思えないですし、すべての臓器は健康な状態ではなかったでしょうね。吉沢さんは闘病中という役どころだから、まさに病気の状態を作り出したとも言えると思います」

 実際、制作陣は声がかすれていたことを明かしていたほか、視聴者からは《見たことない肌ボコボコで衝撃だった。痩せすぎて栄養もとってなかったのかな》と、体型以外の異変を感じ取っていたかのような声もある。

 岡田氏は、吉沢の精神力に驚嘆する。

「正直、自分がトレーナーとして頼まれたら、何かあった時の責任問題にならないように法的な契約をきっちりするのはもちろん、それでも1か月で13キロ減にまでもっていけるかわからない。吉沢さんの精神力がなんとかそれを成し遂げたんだと思いますけど」

 作品ごとにその役者魂が話題になる吉沢。また一つ、伝説を作ったようだ。

岡田 隆(バズーカ岡田)
日本体育大学教授/博士(体育科学)/理学療法士/ボディビルダー
1980年、愛知県田原市出身。日本体育大学 卒業、日本体育大学大学院 修了。東京大学大学院 単位取得退学。
2023年WNBF世界選手権プロマスターズ部門 優勝、文部科学省 スポーツ功労者顕彰(計5回)、日本オリンピック委員会 奨励賞、日本トレーニング指導者協会 優秀トレーニング指導者表彰、NSCA Japan 最優秀指導者賞など数々の賞を受賞。
トレーニング科学、スポーツ医学を学び、身体作りのスペシャリストとして教育・研究・啓発活動に努めている。究極の実践研究としてボディビル競技を続けており、2023年には世界選手権で優勝を果たす。
指導者としては、柔道全日本男子チーム体力強化部門長として2016年リオ五輪、2021年東京五輪で史上最多5個の金メダル獲得などに貢献。また身体づくりの啓発活動としてフジテレビ『ホンマでっか!?TV』など様々なメディアに出演。開成中、灘高、京都大学、三菱商事など受験生・学生やビジネスパーソンに向けて、心身と脳のパフォーマンスを高める方法の講演も精力的に実施している。著書は『脂肪燃焼食』(講談社)など多数、累計100万部超。