■田中卓司の発言は「よっぽどのこと」――元キー局Pの解説

 元テレビ朝日プロデューサーで多数の番組に携わってきた鎮目博道氏は「最終回で演者、しかもメインの人が番組に苦言を言うのはよっぽどのこと」と言い、こう続ける。

「普通は最終回であれば、多少思うところがあっても円満な感じのコメントで締めますよね。そうせずに不満を口にしたということは、よほど意にそぐわないことがあったのだと思います。それは演者やスタッフ、つまり“現場”とは違う温度感でテコ入れが進んでいったことへの不満があったと推測させます」(鎮目氏、以下同)

 鎮目氏は、『呼び出し先生タナカ』が“フジテレビのバラエティ番組”であることに注目する。

「大抵のバラエティ番組は放送が続くと、良い意味で落ち着いていくものです。そこにテコ入れが入ったというのは……ひょっとすると現場とは違う、プロデューサーよりもっと上のレベルからのテコ入れがあったのかもしれません。

 また現在のフジテレビでは、バラエティ番組の制作環境が厳しくなっている、というところもあります。昨年の“フジテレビ問題”の影響で“これまでの制作体制ではダメだ”となり、現場も大変だと聞きますね。局の上層部から、現場の状況をあまり考えていないような指示が出るなど、非常にやりづらいと。

『呼び出し先生タナカ』にも“フジテレビ問題”の影響はあったでしょうし、それで終了した可能性も。もしかすると田中さん自身にも、フジテレビの現在の体制に対するちょっとした不信感があって、それが最終回で出たのかもという感じもします」

 今回の『呼び出し先生タナカ』もそうだが、このところバラエティ番組では、現場と局上層部との確執を思わせる内容を放送する番組が増えている感じも。最近では、深夜番組『人間研究所 〜かわいいホモサピ大集合!!〜』(中京テレビ制作・日本テレビ系/25年4月2日深夜~2026年3月11日深夜)では、“番組終了のリアル”をまとめた再現VTRが3月4日放送回で公開され、話題となった。

 VTRは、演出やプロデューサーなど現場の制作陣と、“テレビ局の司令塔”である編成部の「良い番組」の“価値観の違い”を説明。それによって現場では熱量があり数字も悪くなかった『人間研究所』が終了するまでを細かく解説――という内容だった。

 鎮目氏は言う。

「昔と比べて、制作現場が我慢できないような、不満を抱えた形で終了する番組が増えているということですよね。

 本来であれば最終回で不満を言うメリットというのはないんです。むしろ形だけでも円満に終わらせて、局との関係を保つのが普通ですよね。それを、あえて不満を言って終わる番組が増えている……それだけ現場としては納得いかない形で終わる番組が多いのではないでしょうか。

 制作の現場も、現場スタッフや出演者たちが“自分たちが思うように作れない“と言いたくなるような環境になっており、その鬱屈としたものが蓄積されているところもありそうです」

 最後に鎮目氏は、『呼び出し先生タナカ』の最終回に触れて、こう分析する。

「バラエティ番組は、頑張って継続させていくうちに良い方向に行くことがあるので、田中さんもそこを目指して一生懸命頑張ったと思うんです。でも、思うようにはできなかったことへの不満。さらにスタッフに対する局側からの当たりが厳しかったとか、そういうところもあったのかしれません。

 数字で苦しんでいるバラエティ番組が立ち直るには、現場がノリノリでなければいけません。スタッフや出演者たちが面白がって作っていくことで熱量が伝わってきて数字が伸びていく。だからこそ、現場のやりたいようにやらせてあげないと数字は伸びないという面はあるし、そうでなければ制作現場はどんどんシラけてしまう。異例の最終回となった『呼び出し先生タナカ』でも、そういうことがあったのかなという気はしますね」

 決して一枚岩ではないテレビ局の内部事情。コンプライアンスの順守も厳しく言われるなか、地上波テレビのバラエティ番組の制作は難しくなっているようだ。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)