■一度成功すれば年間で数万円の節約になるのは大きい
こうした需要は、女性も同様です。アイドルグループ『=LOVE』の大谷映美里さんが「歌番組前に自分で整えた」とした昨年11月の前髪セルフカット動画は「天才的な仕上がり」「お手本ありがとう」と大きな話題を呼び、「セルフでもプロ並みの調整ができる」という認識を世間に広めました。プロに任せる安心感よりも、自分で手間をかけて安く済ませる合理性を選ぶ。そんな今の空気感を象徴するような出来事です。
給与は上がらないのに物価だけが上がる現状で、美容代は真っ先に削る対象。バリカンさえあればサイドの刈り上げは自分でもできます。
《一度成功すれば年間で数万円の節約になるのは大きい》
《動画を見ながらやれば大きな失敗はしなくなった》
《千円カットすら行くのが惜しい時がある》
ネット上に飛び交うこのような声は、多くの現役世代の本音でしょう。
「現代の男性、特にZ世代や30代の層は、情報を収集して効率的に目的を達成することに長けています。昨今、美容室を“リフレッシュの場”として捉える余裕がある層と、“髪を切る作業の場”と見なす層の二極化が進んでいますが、後者にとってプロの技術料は、コストパフォーマンスの観点から厳しい査定の対象となります。高品質なバリカンやハサミが安価に手に入り、さらにプロによる丁寧な解説動画が無料で視聴できる今、セルフカットのハードルは極限まで下がりました。身だしなみにかける熱意が冷めたわけではなく、投資すべき優先順位が変わった結果の現象ではないでしょうか」(生活情報サイト編集者)
もっとも、髪質や頭の形は千差万別であり、動画の真似だけで完璧に仕上げるのは至難の業。そのリスクを承知のうえで、あえて不格好でも安さを取るという選択は、今の日本経済の縮図そのものに見えてなりません。身だしなみ投資を止めた男たちは、今もスマートフォンの画面越しに次なる節約術を模索しているのではないでしょうか。
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。